32歳井上尚弥に“衰え”を感じるか？ “完璧神話”に米リング誌の識者が警鐘「アメリカでは反撃してKO勝ちしたことが評価されている」 

DS　今年2月に井上に話を聞いた際、MJのことは非常に高く評価していたのが印象的でした。それほどの相手だからこそ、久々に“モンスター”のパーフェクトゲームが見れるのではないかとの期待があります。オマー・ナルバエス、ファン・カルロス・パヤノ、ドネア第2戦、スティーブン・フルトンなど、井上は相手の前評判が高いときほどいいパフォーマンスをみせる傾向にあります。集中力が高まり、強引な攻めが減り、綺麗なフィニッシュを見せてくれます。MJは久々にそのレベルのライバルなのではないかと井上本人に聞いたら、「ああいう選手とやるときこそ、強い井上尚弥が出せる。自分でも想像していない力が出せる。そういったものを楽しみに自分自身に期待しているんですよ」という答えが返ってきました。だから楽しみだし、私もやはり井上のKO勝利を推します。逆にいえば、ここでもし苦しむようであれば異変だし、衰え云々に関する疑問の答えはMJ戦で提示されるように思います。一方、警戒すべき要素としては、カルデナス戦同様、トレーナーのジョエル・ディアスがMJの参謀としてコーナーに入ること。この点がどう影響するかも見どころの一つになるのでしょう。

カルデナス戦後の会見の様子。デビュー以来の連勝を「30」に伸ばした　©︎Hiroaki Yamaguchi

TG　ディアスはカルデナスに適切な助言を授けていました。私もボクシングの知識豊富なディアスのようなトレーナーのことは深くリスペクトしています。今回得た知識を活かし、9月の本番までにイノウエへの対抗策を練ってくるでしょう。一方、イノウエの方もチーフトレーナーの父親をはじめとする素晴らしいチームを誇っています。陣営同士の勝負も確かに重要であり、特に前半はチェスマッチが展開されるのかもしれません。とはいえ、結局のところ、パンチを出すのはリングに立つ2人だけ。私はやはりイノウエがMJより優れたボクサーだと見ており、勝ち残るのは“モンスター”だという考えに変わりはありません。

〈全2回/前編からつづく〉