革命前夜~1994年の近鉄バファローズBACK NUMBER

「ちょっとヤバいな」野茂英雄の開幕戦大記録を西武も覚悟したそのとき…先制弾の近鉄4番・石井浩郎が耳を疑った言葉「何を言っているんだ!」 

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喜瀬雅則

喜瀬雅則Masanori Kise

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photograph byKoji Asakura

posted2025/05/02 11:05

「ちょっとヤバいな」野茂英雄の開幕戦大記録を西武も覚悟したそのとき…先制弾の近鉄4番・石井浩郎が耳を疑った言葉「何を言っているんだ!」<Number Web> photograph by Koji Asakura

1994年開幕戦、ノーヒットノーランまであと3人の快投を続ける野茂英雄。しかし先制弾の4番・石井浩郎に交代が告げられて…

佐々木誠という男

 西武の1番打者は、佐々木誠だった。

 ダイエー時代の91、92年に2年連続で最多安打、92年には打率.322で首位打者に輝き、40盗塁で盗塁王にも輝くなど、当時「メジャーに一番近い男」と呼ばれた、走攻守の三拍子そろった、最高峰の外野手の一人だった。

 球界の寝業師と呼ばれた根本陸夫が西武からダイエーへと移り、常勝軍団への礎を築くべく、大胆なトレードを仕掛けたのは93年オフのことだった。

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 ダイエーから佐々木誠、3年連続開幕投手の村田勝喜、左腕のリリーバー・橋本武広、西武から、こちらも「メジャーで通用する日本人野手」と呼ばれた秋山幸二、3年連続2桁勝利の経験がある渡辺智男、93年にプロ初勝利を含む3勝を挙げた右腕・内山智之。この「3対3」の大型トレードを成立させたのだ。同一リーグで、それぞれの中軸を打っていた主力が絡んでのトレードは、長いプロ野球の歴史を振り返ってみても、そのインパクトでも三本の指に入るだろう。

 佐々木は、日本での現役通算17年で1599安打。ベストナイン6回、ゴールデングラブ賞も4回。米独立リーグでのプレーを経て、2001年の現役引退後は、社会人のセガサミー、NTT西日本で監督を務め、2017年には古巣・ソフトバンクの3軍監督。2018年からは鹿児島城西高の監督に就任、コロナ禍で開催中止という悲運に見舞われたものの、2020年に同校を初のセンバツ出場に導いている。

佐々木との久々の再会

 2023年限りで鹿児島城西高監督を退任した後、佐々木は神戸に居を移し、2024年7月から、神戸市兵庫区に「佐々木誠の野球教室」を開校。主に小・中学生を対象としたマンツーマン指導は、開校からおよそ1年で30選手が通っているという人気ぶりでもある。

 その練習場に、佐々木を訪ねた。

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