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黒星デビューもひたむきに。菅野智之、35歳の第一歩。
posted2025/04/29 09:00

4月5日は5回1/3を1失点に抑え初勝利。試合後は仲間からビールかけで祝福された
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四竈衛Mamoru Shikama
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Getty Images
敵地トロントとはいえ、デビュー戦に臨む菅野智之は、込み上げてくる感情に少し戸惑いながら、マウンドへ歩を進めた。3月30日。35歳のオールドルーキーは、積年の思いを胸に秘め、初球に時速150kmの速球を投げ込み、メジャーでの第一歩を踏み出した。
「想像していた通り、すばらしい空間だと思いました。あんなに初回からストライクが入らないのは人生で一度もないです」
「かみ締めるところはかみ締めて、緊張とか、自分をコントロールできないとかではなく、今まで経験したことのないような感覚でした」
自分よりも年下の日本人選手が米国で活躍する時代とはいえ、菅野にとってメジャーの扉は、近そうで遠かった。'11年ドラフトでは、日本ハムからの指名を拒否し、1年間浪人してまで、幼い頃からの夢だった巨人へ入団した。'20年オフには、ポスティングを申請し複数球団と交渉を進めながら、コロナ禍の影響もあり、合意にはいたらず、巨人残留を決断した。その後は故障にも悩まされ、不本意なシーズンが続いた。だが、初志を貫く思いは不変だった。昨季、15勝を挙げ、完全復活を遂げた。最後のチャンスを前に、腹を括った。
