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「騒がれ過ぎて気の毒な部分も」10代の田中将大は車内で「ワーッ!」と叫んだ…“同期ドラ1”がコーチになって気づく「将大の最上級」とは
text by

間淳Jun Aida
photograph byTamon Matsuzono
posted2025/04/24 17:01

2007年、ルーキー時代の楽天・田中将大
「一番驚いたのは向上心の高さです。向上心がプロ1年目から活躍できた理由であり、長い間、結果を出し続けている最大の理由だと思っています。極端なことを言えば、将大は10試合先発したら10通りの投げ方をしていました」
長いシーズンで思い通りに投球できる日は数えるほどしかない。コンディションは変化し、球場や天気なども異なる。疲労がたまれば、イメージしたように体を動かせない時もある。だからこそ、その日の自分に合った投げ方をできるかどうかが年間を通じてチームの戦力になるため、さらには長年コンスタントに活躍するためには不可欠となる。プレートを踏む位置や足の上げ方といった目に見える違いから本人にしか分からない感覚まで、田中は多彩な引き出しを持っていたという。
次までに修正しようとする努力も人一倍でしたね
永井が語る。
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「おそらく、毎回全く同じフォームで投げられる投手はいません。特に年齢を重ねると体つきや可動域などが変わります。その日の状態や状況に合わせた投球の必要性を1年目から将大は理解して取り組んでいました。試合で見つかった課題を次の試合までに修正しようとする努力も人一倍でしたね。見習わなければいけないと思いながらも、そこまでの姿勢を自分は貫けませんでした」
多くの投手は立ち上がりでつまずくと、早いイニングでマウンドを降りる。しかし、田中は修正するための引き出しを数多く準備している。その時に最も適した引き出しを開け、投球を立て直す力があるのだ。
相手に弱点を見つけられても、次の対戦までに課題を分析して克服する努力も怠らない。練習中や登板前に隙間時間があればブルペンで傾斜を使ってコーチからのアドバイスや自身の考えを試したり、キャッチボールでイメージと実際の球に違いがないか確認したりする。その結果、引き出しが増えていく。
将大のような考え方をできる選手はほとんどいない
「体の使い方やリリースポイントなどを色々試して、自分の中で取捨選択できる投手です。それを高卒1年目からやっていたのが他の投手との大きな違いです。ここ数年、私は投手コーチとして若い選手を指導していますが、将大のような考え方や取り組み方をできる選手はほとんどいません」
永井の言葉である。入団から年数が浅い投手を指導していると、今持っている能力で勝負しようとする投手が多いという。