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甲子園の風BACK NUMBER
「ノーステップで右中間弾とは」不作センバツでスカウトが衝撃“ドラフト候補No.1野手”横浜・阿部葉太の高い野球IQ…155キロ腕・石垣元気は?
text by

間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/06 11:03

横浜の主将・阿部葉太は強肩強打に加えて俊足好守でプロスカウトの目に留まったようだ
「球速が150キロを超えても、コースや高さが甘かったり、真っ直ぐだけを待たれたりすると、高校生の打者でも対応できると実感したはずです。変化球を含めたコントロールの重要性を知る機会となった今大会は、石垣投手にとって課題が明確になる収穫があったと思います」
石垣は準々決勝の花巻東戦で、155キロの速球を弾き返されている。
浅いカウントで速球に狙いを定める打者は、スピードがあっても甘く入ってくれば安打にできる。石垣は準決勝の横浜戦でも150キロを超える速球を痛打され、5回に3点を失っている。スカウトは、こう話す。
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「失点を重ねた5回は変化球でストライクを取ることに苦労していました。試合も負けている展開で走者を溜めたくない意識から、真っ直ぐ中心にならざるを得ない状況に追い込まれていました。それに対し、6回以降はカットボールやフォークの制球が安定して得点を許していません。打者に変化球を意識させられるかどうかで、真っ直ぐの持つ意味が大きく変わることが分かったと思います」
横浜・阿部の「ノーステップ弾」にスカウト衝撃
野手で評価を上げたのは、主将としてチームをけん引した横浜・阿部葉太選手だった。決勝の智弁和歌山戦で4安打を放つなど、全5試合で安打をマーク。22打数10安打の打率.455。打点は10、盗塁も4つ記録し、勝負強さや足も光った。
中でも、スカウトを驚かせたのが2回戦の沖縄尚学戦で放った先制3ラン。内角低めの球をすくい上げ、右中間スタンドに運んだ。前回大会から導入された低反発バットの影響で柵越えが減少する中、バットの違いを感じさせない打球だった。スカウトも「間違いなく、大会ナンバーワン野手」と言い切る。
「スイングスピードが速く、打撃センスも感じさせる選手ですが、飛距離に驚きました。ノーステップで右中間スタンドまで運ぶ打力があるとは思いませんでした。外角の球を逆方向に打つ技術もありますし、状況に応じた打撃も見せていました。守備や走塁も含めて、考えて野球に取り組んでいると感じさせるところも魅力です」
俊足強肩も能力頼りではない“野球IQ”の高さ
阿部は50メートル5秒台の俊足で、遠投100メートルと肩も強い。その能力に頼らずに——“野球IQ”の高さを感じさせる、頭を使ったプレーも随所で見せた。