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センバツの“静かな異変”花巻東はなぜ「地元主義」をやめたのか…菊池雄星・大谷翔平に憧れる選手が「集まる」魅力ある高校のあり方とは 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2025/03/29 11:02

センバツの“静かな異変”花巻東はなぜ「地元主義」をやめたのか…菊池雄星・大谷翔平に憧れる選手が「集まる」魅力ある高校のあり方とは<Number Web> photograph by JIJI PRESS

7年ぶりにセンバツベスト8に進んだ花巻東。健大高崎に力負けはしたが、少しずつ変革を進めている

 中谷は続ける。

「自分の経験、もしくは、いろんな人から学んでいることからアドバイスしていくのが僕ら大人の役割だと思っているので、それが智弁和歌山の魅力を上げるものになっていけばと思います。選手たちを生かすために、この子にはこういう方向性があるんじゃないか、あるいはスケール感のあるメジャーを目指すような方向性がいいんじゃないかとか、ご縁があった選手に対してアドバイスできればなと思います」

 同じ「強豪・智弁和歌山」でも、それぞれの時代にあわせて、高校の魅力は変貌してきているということだ。

エナジックの「ノーサイン野球」の魅力

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 今大会でもっとも魅力を発信したチームの一つに挙げられるのが、エナジックスポーツ高等学院だ。沖縄で甲子園に導いたチームがこれで自身3校目になる神谷嘉宗監督は、文武両道を実践する指導者として辣腕で知られる。前任の美里工では、「第一種電気工事士」という国家資格の取得が全国でもっとも多い学校に育てながら、甲子園出場も果たすという偉業を達成した。

 エナジックはノーサイン野球を掲げ、野球を楽しみながらもその実「野球脳」が優れた選手を育成している。

 ノーサインというと「自由」の代名詞のように聞こえるが、実際は責任を自身で取るということ。そこには選手の自立が必要になる。一方で、見守る指揮官はプレーから選手の考えを理解できるので、相互の関係がすこぶる良くなるというのが最大の利点だ。

「勝っても負けても、相手をリスペクトして笑顔で」

 神谷監督が話す。

「(ノーサイン野球は)自分で考え、野球の知識、脳が上がればいいかなと思っています。まだシーズンが始まったばっかりで実戦不足もありますので、これから伸びると思います。いろんな展開を知ることによって野球に詳しくなって、最後の夏に爆発するといいますかね。そうなってほしいですね。

 これまで取り組んできて(必要性を)感じるのは、指導者も選手の気持ちを理解するということ。相互の関係がいい方向に向くと思います。試合に勝っても負けても、悔いは出さないようにしなさいと言っています。金メダルを取れなくて『自分を褒めたい』と言った有森裕子選手のように頑張れと。

 勝っても負けても、相手をリスペクトし笑顔で終わる。そういう野球をしていれば、見ている人たちも『野球は泥臭い』という印象が変わるんじゃないでしょうか。この2試合では、選手たちは本当に頼もしかったですね」

【次ページ】 花巻東が見据える「目指すべき道」とは

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