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「苦言翌日、ロバーツ監督は淡々と」大谷翔平“あの走塁ミス”後日談…「オオタニの判断が正しかった」「OK!」ドジャース三塁コーチとの会話《ドジャース大谷翔平BEST》
posted2025/03/17 06:00

走塁で驚異的な進化を見せた2024年の大谷翔平。そんな彼がロバーツ監督から唯一苦言を呈された“ミス”の後日談とは
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
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Sarah Stier/Getty Images
大谷翔平は結婚をはじめ話題に事欠かなかった昨季、進化した走塁で前人未到の「50−50」を達成するとともに、ポストシーズンでは指揮官デーブ・ロバーツから唯一苦言を呈された日があったのは記憶に新しい。日本ハム時代から大谷を知る番記者の柳原直之氏が取材して知った後日談とは。〈NumberWebレポート/全2回の1回目〉
日本ハム時代に語った「走塁は一番、野球勘が出る」
ドジャース大谷翔平の類いまれな走塁センス。その土台は岩手・花巻東時代に培われた。走塁練習を毎日行い、一塁走者、三塁走者としての打球判断を養った。「内野の黒土の終わりまで全力疾走」「外野フライは二塁まで全力疾走」という決まり事もつくって取り組んだ。そんな全力疾走が相手守備陣に見えないプレッシャーをかける。
日本ハム時代の2016年には、次のように語っていた。
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「走塁は、僕なりに昔から頑張ってきた。一番、野球勘が出るので難しいし、特にプロの打球は難しい。走塁ミスは流れが変わるので気をつけている」
自身初、チームとして4年ぶりにワールドシリーズを制した2024年シーズン。自己最多59盗塁を記録し、タッチアップは三塁から本塁だけでなく、一塁から二塁、二塁から三塁も決めた。先の塁を狙う貪欲さ、そして冷静な判断は花巻東時代の特訓のたまものだった。
そんな大谷がドジャース移籍後初めて走塁で苦言を呈されたことがあった。ドジャースの3勝1敗で迎えた10月18日のメッツとのリーグ優勝決定シリーズ第5戦だった。
敵地ニューヨークでの初回、ドジャースは先頭打者の大谷が左腕ピーターソンから右前打を放つなど無死二、三塁のチャンスをつくった。しかし、テオスカー・ヘルナンデスの遊ゴロの間に三塁走者の大谷はスタートを自重した。
SNS上で拡散されたロバーツ発言と走塁判断
真剣勝負のポストシーズンの試合中であっても、中継局のインタビューが行われるのが近年のメジャーリーグ中継である。デーブ・ロバーツ監督はインタビューの最後に、初回の大谷の走塁を問われると、真顔で苦言を呈した。
「彼は少し頭が真っ白になり、そこで固まったのではないか。あのプレーで明らかにメッツは勢いをつけた」
私はバックネット裏上の記者席でこの走塁を見ていたが、そこまでの凡走には思えなかった。そのため、ロバーツ監督の物言いに驚いた。ただ、瞬く間にこのインタビュー映像はSNS上で拡散され、大谷の走塁判断やロバーツ監督の発言の是非を含め、大きな議論に発展した。