- #1
- #2
ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「そんな甘い覚悟じゃない。やれないと思ったら言いませんよ」DeNA伊勢大夢が先発転向の真相を語る「もう一度、貪欲にやりがいを求めたかった」
text by

石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/03/10 11:03
過去5年間、リリーフとして盤石の地位を築いてきた伊勢大夢。なぜ今、あえて先発という未知の領域に挑むのか?
投げっぷりのよさとは異なり、伊勢は繊細な人間だ。とくにこの1~2年は、ピッチング内容もしかり、苦悩している様子が見て取れた。釈然としないまま球場を後にする姿を何度見たことだろうか。ロッカーが隣の森原康平は、伊勢が「野球難しいっす」と、こぼしているのを何度も耳にしたという。
やれないと思っていたら言いませんよ
だが今の伊勢は、先発としてどう投げるか悩みがあるにせよ、憑きものが落ちたように快活としている。新たな挑戦はエナジーとなって、精神と肉体に活力を与えているようだ。
リリーフとしての存在があまりに大きかったからこそ、「伊勢は中継ぎ向きだ」とか「先発では難しい」といった声が聞こえてくるが、そんなものは本人にとってはどこ吹く風だ。
ADVERTISEMENT
「自分でやれないと思っていたら言いませんよ。これでやっていけると思ったから希望を出したまでで、単にわがままで『やりたい!』と思って口にしたわけではないんです。プロだし、これで飯を食べていますし、球団と話し合ってチームの力になれるって結論があったからです。
もちろん、監督やコーチからチームが優勝に近づくためにという判断で『リリーフをやれ』と言われれば、当然それに従います。けどそうなるとマスコミから『リリーフ降格』と報道されるかもしれないけど、いやいやまったく違うよと僕は思っているんで、まったく気にはなりませんね」
久しぶりに、野球を楽しめている
意気軒高。伊勢は顔を上げて語る。
「先発挑戦は本当に自分にとって新鮮だし、すごく面白い経験をさせてもらっています。野球を楽しめているっていうんですかね。久しぶりにそういった感情になれているので、だからいざリリーフと言われても、この気持ちをそのままぶつければいいと思っているんです。本当、開幕まであとわずかですけど、本当に待ち遠しい気持ちなんですよ」
長いシーズン、どのように賽は振られるのかまだわからないが、伊勢大夢という投手が2025年シーズンに向け生まれ変わったことは間違いない。トレバー・バウアーも加入し、厳しいローテーション争いとなるが、まっさらなマウンドに立ち、リリーフ時代と同じような内容でイニングを重ねる伊勢の姿が早く見たい。
〈全2回の2回目/はじめから読む〉

