プロレス写真記者の眼BACK NUMBER

「一人のプロレスラーが消える」上谷沙弥と中野たむ“敗者即引退マッチ”の疑問「なぜ上谷まで?」…スターダム社長「会社は悪く言ってもらって構わない」 

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

PROFILE

photograph byEssei Hara

posted2025/03/07 17:04

「一人のプロレスラーが消える」上谷沙弥と中野たむ“敗者即引退マッチ”の疑問「なぜ上谷まで?」…スターダム社長「会社は悪く言ってもらって構わない」<Number Web> photograph by Essei Hara

敗者退団マッチに敗れた中野たむと、勝利した上谷沙弥。4月27日の横浜アリーナでは、赤いベルトもかけた「敗者引退マッチ」が行われる

岡田社長「会社のことは悪く言ってもらって構わない」

 退団マッチから一夜明けた3月4日、中野は会見でこう話した。

「敗北して退団という運びとなりました。岡田社長の計らいで横浜アリーナまでフリーでの参戦。横浜アリーナで負ければ、即引退。この世界から完全に消えます。一番憎い相手に情けをかけられて、首の皮一枚で生かされていることがみじめで、みなさんにどう顔向けしたらいいかわかりません。引退マッチは私が勝手に言い出したことで、それを会社が承諾してくれた。会社が私のわがままを聞いてくれているということです。会社を悪く言うのはやめてください」

 これに岡田社長が口をはさんだ。

ADVERTISEMENT

「引退をかけて戦うというのを認めたのは会社なので、会社のことは悪く言ってもらって構わない。見たくない、ふざけるな、嘘つき。何でも言ってもらっていいので。お願いは、この二人の戦いをもう一度ぜひ見に来てください」

 中野は「スターダムは私にとって人生のすべてです」とまで言った。

「プロレスには人生のすべてが詰まっていると思ってます。私からスターダムを取ってしまったら、もうプロレスラーという事実しか残っていません。だからプロレスラーとしての存在意義をかけて戦う。この人生最大の悪夢から這い上がってみせます」

残る疑問…なぜ上谷沙弥まで引退を口にしたのか?

 上谷は言う。

「この試合が決まって疑問に思ったヤツも多いと思う。何で上谷も引退をかけるんだって。挑戦してくるヤツが、プロレス人生すべてをささげて挑戦するって言っているのに、チャンピオンとしてそれを受けて戦わないのはダサくないか。受けて立つのがプロレスラーなんだよ。私も人生かけてプロレスやってるんだよ。生半可な気持ちで一切やってない。引退をかけるというのが、一つの覚悟であり証明。見てるヤツらはいろんなこと思うかもしれないけれど、その覚悟を、生き様を見届けてくれないか。こいつとなら近年の女子プロレスラーが見せたことないような、成し遂げたことがないような新境地が見られると思ったんだよ」

 勝った上谷は、なぜ自らの引退まで口にしたのか。負ける訳がないという自信がそうさせたのだろう。だが、筆者は上谷の言葉の全部をそのまま信じてはいない。これは上谷が仕組んだ最大のワナであって、そのワナに中野が手をかけてしまったのではないかと感じている。

 ともあれ、人気のあるプロレスラーが、完全決着で、引退と赤いベルトをかけて戦う。その結果、4月27日、一人のプロレスラーがリングから消えることになる。

関連記事

BACK 1 2 3
#中野たむ
#上谷沙弥
#岡田太郎
#ジャッキー佐藤
#マキ上田
#玖麗さやか
#岩谷麻優

プロレスの前後の記事

ページトップ