- #1
- #2
ボクシングPRESSBACK NUMBER
「まるで重量級…」27歳中谷潤人“衝撃KO”に絶賛の嵐…それでも英国人記者が満点評価をつけなかった理由は?「井上尚弥が相手なら強引に詰めなかった」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2025/02/27 17:00

3度目の防衛に成功したWBCバンタム級チャンピオンの中谷潤人(27歳)。圧巻KOでプロデビューから続く連勝記録を「30」に伸ばした
DS 中谷、クエジャルはともに身長173〜174cmとバンタム級としては破格に大きく、しかも共にアグレッシブに大きなパンチを振るい、まるで中量級、重量級の戦いを見ているようでした。トムの言葉通り、KOシーンも迫力たっぷり。フライ級、スーパーフライ級で戦っていた頃の中谷は粘る相手をねじ伏せるようなKOが多く、アンドリュー・モロニー戦(2023年5月)での破壊的な最終ラウンドKOのあと、「やっといいシーンを生み出せた。これまでは相手が嫌がるようなダウンが多かったので」と喜んでいたのを覚えています。
それが最近は豪快なKOを連発。バンタム級への昇級で減量苦から解放され、身体ができてきたことでパンチの破壊力を増しているのでしょう。今回の試合もハイライトの1つとして後々まで記憶されることになりそうです。総合的に見て、今戦での中谷のパフォーマンスを採点するならトムはどのグレイドを与えますか?
TG 「Bプラス」ですね。もともと中谷は総合力でクエジャルの一段上のボクサーでした。強烈なパンチャーであり、その実力通りの結果を出したということ。先ほども話した通り、中谷らしくないかなと感じた場面もあったのでそのグレイドになります。
「鼓膜が破れた」左フック被弾の原因
ADVERTISEMENT
DS 特に異論はありませんが、派手なノックアウトの付加価値も考慮して私は「Aマイナス」をつけます。今戦で突っ込みどころがあるとすれば、クエジャルのパンチを多少なりとも浴びたこと。クエジャルは優れた左フックを持っており、中谷はKOに至るシークエンスに入る直前に危険なタイミングで被弾していました。
試合後、中谷は耳の鼓膜が破れたことを明かしていました。プロボクシングで多少のパンチをもらうのは当然のことであり、特に中谷のように攻撃的な選手であればそれはなおさら。ただ、もっと強い選手、もっと攻撃力のあるファイターとの戦いであのようなパンチを浴びたら、と少し危険を感じたのは事実でした。
TG その懸念は理解できますが、中谷は相手のパンチ力がどの程度かを感じた上であの戦い方を選択したと私は見ています。リング上で対峙し、クエジャルのパワーを測り、恐れるに足らずと思ったのでは。そんな思考の流れからよりリスクを冒した戦い方をしたのであれば、問題はなかったと考えます。
これまでの中谷のキャリアの中で、より丁寧に、ディフェンスにも気を配りながら戦う姿も見てきました。たとえば井上尚弥のようなとてつもないパンチャーと対戦し、1発で試合の流れを掌握されてしまう可能性があるとすれば、序盤から強引に詰めにいったりはしなかったでしょう。