「98-92は疑問だが…」那須川天心の判定勝利は“妥当”なのか？「理解できない」モロニー陣営の不満爆発も「天心びいきとは思わない」現地記者の本音

「わっ！？」

　クライマックスは6ラウンドに訪れた。対戦相手の痛烈なワンツーを食らった神童は後方へとよろめいた。2月24日、有明アリーナ。『Prime Video Boxing 11』のセミファイナルで行われた那須川天心（帝拳）とジェーソン・モロニー（豪）による119ポンド契約10回戦。その刹那、天心は冒頭のような驚きを声に出したい心境になったという。

「抜けた感じが…ここにきてメイウェザー戦が活きた」

　筆者は天心とフロイド・メイウェザー・ジュニアのエキシビションマッチ（という名のリアルファイト）で起こったワンシーンと重ね合わせた。そう、1ラウンド、メイウェザーの右フックを食らってダウンを喫したシーンだ。あのときも天心は後方に倒れ込んだ。

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　しかし、最終的に重なり合いそうで重なり合わなかった。今回は尻もちをつく寸前のところでバランスを保ち、ダウンを回避したからだ。試合後、天心は「初めて効かされた」と素直に認めている。

「（一瞬）意識が抜けた感じがしました。ここにきてメイウェザー戦が活きた。思い返してみればという感じだけど、何が何でも倒れない、と」

6ラウンド、モロニーのワンツーを浴びてよろめく那須川天心　©Hiroaki Yamaguchi

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　それ以外にも、天心は何度かピンチに見舞われている。1ラウンド終盤にはモロニーの右ストレートに足が揃い、さらに右フックを追撃された。元世界チャンピオンの洗礼。その猛攻から、過去のボクシングの試合では一度も感じたことがない圧を感じた。これまで試合中に微笑を浮かべる余裕すらあった天心の表情も強張らざるをえなかった。

　選手の反応に観客は敏感だ。

「天心、頑張れ！」

　応援のトーンはピンチに陥った選手へのそれに変わった。すかさず左フックを返していくが、劣勢は否めない。明らかにモロニーのラウンドだった。

　ボクシングに転向して以来、こんな天心を見たのは初めてのことだった。キックボクサー時代まで遡っても、ロッタン・ジットムアンノンとの一戦で劣勢に立たされたとき以来の大ピンチだった。

試合開始早々の1ラウンド、モロニーは右ストレートで那須川天心を攻め立てた　©Takuya Sugiyama

　だが、2ラウンドになると、天心は初回の流れを断ち切るかのように、足を使ったスピード感溢れるボクシングに転じた。モロニーのジャブに合わせてワンツー。元世界王者が前に出てくるタイミングを見計らってカウンターを決めていく。

　3ラウンドは左ストレートや左ボディもヒットさせるなど、さらに自分のリズムを掴み始めた。続く4ラウンド、積極的にモロニーが前に出ると、天心はステップを駆使して攻撃をかわそうとする。とはいえ、モロニーのプレスも強く、評価が分かれそうなラウンドだ。

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