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「やっぱりこういう要求をしてくるか!」“東京ヴェルディに城福浩を呼んだ男”が明かす城福監督の仕事…強化部長・江尻への問い「タイトルか、J1残留か」
text by

近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsuhi Kondo
posted2025/02/26 11:01

東京ヴェルディ監督の城福浩(63歳)。J1日本人最年長指揮官の仕事とは?
その一つの成果として、ヴェルディのクラブハウスに隣接するグラウンド(但し、よみうりランドのイベント時には即座に来場者の駐車場に変わってしまう)を、約1年かけて整備を行ない、ヴェルディ専用の練習グラウンドとして使用できるようになったばかりだ。
あるときは監督に寄り添い、でもあるときはクラブ側に立って、絶妙の匙加減でチームづくりを進めてゆく。そのバランス感覚はきっとどんな仕事でも同じなのではないかな、と江尻は言う。
――同時に、江尻さんがどんな選手を探し出し、どう連れてくるのかも同じくらい大事なことですよね?
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「選手を育てながら、というのがクラブの方針です。とはいえ当然監督としては最初から戦力になるレベルの選手をできるだけ多く持ちたいですよね。そういう意味では、例えば大学生を取りに行く場合でも、これまでは2番手、3番手の選手にアプローチしていたのを、大学サッカー界で1番の選手にターゲットを変更しつつあります。それをやると、名古屋、浦和、広島、川崎F、そういうクラブと重なるかもしれません。でも我々はこのクラブの特徴を伝えて来てもらうように努めるしかないです」
城福さんとも「怖いね」って話すんですが…
見抜くべきは、その選手の持つスキルだけではない。城福が重要視するトレーニングにアジャストしながら、自分自身がこのクラブで成長してやるんだという「メンタリティ」を持っているかどうか。それこそがとても重要だと江尻は考える。
「言い方は悪いですが、オレはこのクラブに短期間しかいるつもりはない、成り上がってやるというメンタリティの持ち主の方が、足一歩分の努力を厭わない、と思うんですよ。世間的には、このオフのヴェルディは、完全移籍でこの選手も、あの選手も手に入れたって褒めてくれるじゃないですか。でも実はここからなんです。城福さんとも『怖いね』って話すんですが、人って一度十分なものを手に入れるとやらなくなってしまいますから」
自分はクラブに買い取ってもらったからもう大丈夫、そう思ってしまった瞬間、選手の成長は止まってしまう。選手は常に競争の中でしか成長しない。かつて江尻が師と仰いだイビチャ・オシムはこんな表現を使ったことがある。
《サッカー選手は年金生活者になってしまったらおしまいだ》
江尻が伝えた「数式」
「いい例は、今回ジュビロから移籍してきた鈴木海音だと思うんです。彼に対してのプレゼンは本当にうまくいったなと思います。彼はジュビロで育成年代からプレーしているんです。だから正直、彼にはクラブに残らなきゃいけないっていう使命感があったと思う。それは僕もよくわかります、古河電工からジェフで同じような立場だったから」
そんな鈴木海音の心をどう動かすか、江尻は「野心」に訴えた。君は将来になにを求めているんだ、と。