甲子園鮮烈デビュー、あの巨人戦から10年…“阪神ドラフト1位”意外すぎる現在の姿とは？「26歳で戦力外通告」「引退後は安定した生活を捨て…」 

　ドラフトから数日が過ぎたある日の休み時間、庄司は誰もいない教室に横山を呼び出した。

　教室につき扉を開けると、既に庄司が正座して待っている。

「野球……辞めるんか？」

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　問いかけに、横山はこう反応した。

「やります。すいませんでした」

　即答だった。するとはじめて、恩師は自身の出身でもある新日鐵住金鹿島から入社の話が来ている、と横山に告げた。横山は大学やプロ球団が自身にどれだけ関心を示しているか把握していなかったのだ。だが、この時自身の気質を誰より理解し、気にかけてくれているのが、鬼のように厳しかった庄司であることをはじめて悟った。

社会人1年目は「ビデオ係」

　茨城県・鹿嶋市に拠点を移すと、会社では工場業務をあてがわれた。配属された同じ部署からは2人連続でプロ野球選手を輩出している。周囲からの期待も高い。野球に専念できる“特別待遇”に近かった。しかし、肝心の野球では環境に順応できなかった。

　1年目にチームから与えられた役割は、撮影全般を担当する「ビデオ係」。公式戦出場はゼロ。2年目も公式戦は最後に少し登板機会があっただけだった。

「コントロールが悪すぎて全然通用しなかった。高校とのレベルの違い戸惑いましたね。ただ、一番は自分の意識の問題でした。練習も高校に比べると緩いから、何年続けてもこのままじゃプロになれない、と1年目で理解した。一方で空いた時間はビリヤードやパチンコをしたり、遊びに流されてしまう自分もいました」

　いったい何のためにここまで来たのか――ドラフト解禁を翌年に控えた2年目のオフ、横山は自身にそう問いかけていた。

〈第2回へ続く〉

#2に続く

「うわ、坂本やん」鮮烈甲子園デビューも“わずか6年”で戦力外通告…阪神ドラ1左腕に突きつけられた現実「その後は球団職員を1年で辞めて…」