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アシックス富永満之代表取締役社長インタビュー「テニスマーケットの潜在力とアシックスが描く未来とは?」 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byASICS

posted2025/02/06 11:00

アシックス富永満之代表取締役社長インタビュー「テニスマーケットの潜在力とアシックスが描く未来とは?」<Number Web> photograph by ASICS

アシックスはなぜテニスに注力するのか。富永満之代表取締役社長COOに話を聞いた

「私はアシックスに入るまで、35年間、ITの企業におりましたが、いつか事業会社でITに携わりたいとずっと思っていました。そうして、アシックスにITの責任者として入社した経緯があります。7年間やらせていただいたのですが、以前は各国バラバラであったシステムを、グローバルで統一された基幹システムに変えていった。どこで売り上げが伸びているのか、どこで利益が出ているのか、一目で分かるようにして、的確な経営判断ができるようにしました。

 もう一つは、Eコマースや店舗で継続して買ってくださる人をしっかりサポートするために、デジタル化を進めています。こうすることで、お客様とのタッチポイント(接点)が増え、データを入手することもできます。テニスにおいては、世界的なテニスアカデミーとの契約で、コーチを通じてアカデミーの生徒さんとの接点をつくりました。そうして、消費のトレンドですとか、どんなサービスが受け入れていただけているのかを分析できるところまで進めていきたいです」

ーー入社前にはアシックスに対し、どんなイメージをお持ちだったのでしょうか。

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「実は私が前の会社、SAPにいた時の取引先でした。当時はいろいろな提案を行ないましたし、長いお付き合いをさせてもらいました。また、実家が神戸だったという縁もあって、神戸に本社があるアシックスに何度も足を運ぶうちに、社員の方々が会社にもスポーツにもパッションをお持ちで、チームワークもよく、素晴らしい会社、グローバルな会社だなと思っていました。ですから、オファーをもらったときは非常にうれしかったですね」

ーー実際に仕事をなさって、イメージとの違いはありましたか。

「当時、売り上げは確かにグローバルだったのですが、ITも含めたオペレーションがグローバル化できているかというと、売り上げに見合う水準には達しておらず、ギャップがあると感じました」

「安全に長く楽しく」が重要

ーーメルボルンで行なったプレゼンテーションでは、トップ選手を含むスポーツ愛好者のウェルビーイング(※身体的、精神的に良好な状態にあること)について強調されていました。Sound Mind, Sound Bodyというキャッチフレーズにあるように、会社に根付く考え方なのでしょうか。

「創業の精神というか、鬼塚喜八郎さんが会社を作られたころは、第2次世界大戦後の非常に社会が厳しい中、すさんでいく神戸の子どもたちをサポートしたいというところからスタートしています。ですから、選手をどうサポートするのか、一般愛好者、お子さんや年配の方も含め、どうやったら長くスポーツをやっていただけるかというのは、みんなが考えていることなのです。勝つことが重要だとか、パフォーマンスは絶対であるというだけではなく、安全に長く楽しくできることが重要だというところは、もっとも大事な目標なのです」

ーー富永社長はご自身でもテニスをなさっていて、プロを目指して真剣に取り組まれたと聞いています。その経験がお仕事に生きている点はありますか。

「テニスを通して仲間やコーチとのかかわり方を学び、もちろん勝負の厳しさも学びました。中学、高校とテニスに打ち込んだことは海外(アメリカ)の大学に行くきっかけにもなりました。なにか新しいことにチャレンジする、アップダウンがあっても挑戦していく、前向きに考えていくというのも、この頃に学んだことかなと思っています。勝ち負けだけでなく、それをしっかりやったということ自体が重要なのです。それもスポーツマン精神の一つですし、そういった中学、高校時代に授かったものは今でも頭の中に入ってる、DNAに組み込まれていると思っています」

ボルグやマッケンローの時代に深くはまった

ーー最初にテニスに接したきっかけはなんだったのでしょうか。

【次ページ】 ボルグやマッケンローの時代に深くはまった

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