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「フェザー級で戦える体はできている」井上尚弥が圧勝後に明かした“驚きの構想”…「じつは過去最重量だった」異例のキム・イェジュン戦“本当の意味”
posted2025/01/25 18:15
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
スーパーバンタム級4団体統一戦が1月24日、東京・有明アリーナで行われ、チャンピオンの井上尚弥(大橋)がWBO11位の挑戦者、キム・イェジュン(金芸俊=韓国)を4回2分25秒KO勝ちで下し4本のベルトを守った。試合の延期や対戦相手の変更という異例の事態をたどった防衛戦の意味を問う――。
結果は圧勝…それでも難しかった“異例ずくめの一戦”
試合後、マイクを握った井上のコメントに驚かされた。
「今の気持ち……疲れました。試合で疲れたというよりも2カ月間にいろいろありましたし、中止とか対戦相手の変更とか、正直きつかったところもある。こうして無事に勝つことができて、終えることができて、肩の荷が下りたというか、どっと疲れがきました」
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当初、予定されていたサム・グッドマン(オーストラリア)に代わってリングに上がったキムは予想していた「オーソドックスでスイッチもする」スタイルではなく、完全にサウスポーで井上と対峙した。それでも井上は上下にていねいに打ち分けて挑戦者にダメージを与え、4回、左フックをヒットし、最後はワンツーを正面から叩き込んでキムを沈め、あっさり試合を終わらせた。
試合そのものは圧勝であり、相手がピンチヒッター、世界初挑戦のキムであることを考えれば当然の結末と受け止められる。ただし、井上がキムのワンツーを何度か被弾したシーンは見ている者に「おや?」という印象を与えたはずだ。これに関する井上のコメントが興味深かった。
「キム選手の試合はザッと見たくらいなので、あとは自分のキャリアと引き出しを信じて戦おうと思った。軌道だったりを把握できていなかったので、ああいうパンチをもらったのかなと思います」
あらためて思う。井上はどんな相手に対しても研究を重ね、対策を練って試合に臨んできたということを。希代の実力者といえども中止や延期が連発した異例ずくめの防衛戦を乗り越えるのは楽ではなかったということだ。