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「セナとフェルスタッペン、どちらが速いのか」ミカ・サロ、イワン・カペリらF1関係者の見解「ふたりとも不世出のドライバーだが……」
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Getty Images/Red Bull Content Pool
posted2025/01/24 11:04

マクラーレン・ホンダ時代のセナ(左)と2024年に4回目の王座を獲得したフェルスタッペン
80年代から90年代にかけてセナとレースを戦い、現在はメディア側に立って、ドライバーたちを見続けている元F1ドライバーのイワン・カペリも「マックスのほうが速いのではないか」と回答した。しかし、「それでもマックスのほうが優れたドライバーだという結論にはならない」とも語り、その理由を次のように説いた。
「セナがいたからこそ、フェルスタッペンのようなチャンピオンが誕生したからだよ。アイルトンがチャンピオンになったのはホンダのエンジンが持っている能力を生かすという点において、チームメートで最大のライバルだったアラン(・プロスト)よりも努力したからだった。彼はホンダのエンジニアと当時使われ始めたばかりのテレメトリーデータを分析して、ホンダのエンジンに適したアクセルワークを編み出した」
それが「セナ足」だった。セナ足とは、アクセル・オフ状態のコーナリング中でもエンジン回転をキープするために小刻みにアクセルペダルを踏む技術で、当時のF1でセナが得意とし、ホンダのエンジニアとともに、その技術を独自に進化させていった。
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「そのアイルトンを倒すために優秀なエンジニアをそろえ、新しいピットストップ戦略を生み出したのが(ミハエル・)シューマッハだった。このシューマッハの記録を更新したルイス(・ハミルトン)もまたシューマッハと同様、メルセデスに移籍してから常勝軍団を作り上げ、その中で20戦以上の長いシーズンを乗り切るスタミナを養うことで、セバスチャン(・ベッテル)やニコ(・ロズベルグ)といったライバルたちとの激闘を戦い抜いた」
偉大なドライバーたちの遺産
そして、「そのハミルトンを倒すために現れたのが、フェルスタッペンだった」とカペリは語る。
「アイルトンの能力、シューマッハの組織マネージメント力、ルイスの肉体的・精神的持久力、それらをすべて持ち合わせているだけでなく、レース後もファクトリーに足を運んでシミュレーターに乗って、だれよりもマシンを速く走らせる研究を怠らない努力家なのがマックスだ。だから、アイルトンと単純に比較すれば、マックスの方が速いのは当然のことで、それはアイルトンをはじめ多くの偉大なドライバーがいたからこその帰結。マックスのほうがアイルトンよりも優れたドライバーだからではない」
異なる時代に活躍したドライバーを比較することが難しく、結論を出しても意味がない理由はそこにある。
ただひとつ言えるのは、F1が続く限り、いつの日かフェルスタッペンを超えるドライバーが間違いなく現れるということ。そのときもまた、私たちは新しいヒーローとフェルスタッペンを比較することだろう。しかし、それ以前に多くの偉大なチャンピオンたちが、さまざまな努力を重ねてきたことを忘れてはならない。
