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「なんで誰も気づいてくれないのかな、って」殿堂入りの元中日・岩瀬仁紀「愛知県出身」だけじゃないイチローとの“ある共通点”と色褪せぬ偉業
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/18 17:00
野球殿堂入り通知式で記念写真するイチローさんと岩瀬仁紀さん
岩瀬氏が「ワールドウイング」と出会ったのは1998年の冬である。ドラフトで中日を逆指名し、本格的なプロでの生活が始まる前。
「初めて行ったあのときから、すごく体になじんでいる。それに年齢を重ねるにつれ、効果を実感できたんです」
「今もゾクっと…」伝説の完全継投
これは万人に共通するとは限らないし、保証されるものでもないが、明らかに恩恵を受けた「体験者の言葉」ではある。能力と努力だけでは、過酷なリリーフ稼業を20年も継続することはできない。だからこそ、球団施設内の専用マシンで済ませることなく、シーズンオフにはアクセスの悪い鳥取市まで通い続けたのだ。
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いかなるマウンドでも冷静沈着。1点どころか1人の走者も許されない究極のマウンドでも、ミッションを完遂した。2007年11月1日の日本シリーズ第5戦である。勝てば日本一。1対0。先発の山井大介が8回まで1人の走者も出していない。それでも落合博満監督は「投手、岩瀬」と球審に告げた。とてつもない重圧と信頼。岩瀬氏は抑えきった。殿堂入りの記者会見でも「最も印象に残るシーン」としてこう語っている。
「山井が完全試合している中で、9回を投げた。この先も出てこないんじゃないかというリレーになりました。今でもゾクッとするくらい緊張感が走りますし、ましてや日本一が決まる試合でしたし。(抑えられて)ホッとしたという気持ちが残っています」
日本シリーズで「6S」の偉業
しかし、岩瀬氏が日本シリーズで抑えたのは、この試合だけではない。同じく会見で「最も誇れる記録」として挙げたのが、通算6度、計20試合の日本シリーズ登板で驚くことに1点も取られなかったことだった。
「あまり表には出ていない(報道されていない)と思いますが、防御率ゼロというのは誇りに思っています」