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元ヤクザ、少年院出身、“入れ墨”を消してリングに…平成ボクシングの異端児・大嶋兄弟の現在「撮りたくなる魅力が2人にはあった」 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byOhshima brothers

posted2025/01/27 11:06

元ヤクザ、少年院出身、“入れ墨”を消してリングに…平成ボクシングの異端児・大嶋兄弟の現在「撮りたくなる魅力が2人にはあった」<Number Web> photograph by Ohshima brothers

元祖・入れ墨ボクサーとして名を馳せた大嶋宏成(右)と、その背中を追いかけてプロボクサーになった大嶋記胤

 記胤は記憶を辿る際に、何度か言葉に詰まることがあった。その重みは本人にしかわかりえない。逮捕歴や悪さを重ねた過去を自省している部分もあるのだろうと想像がついた。それでも、現在の仕事について聞くと口調はなめらかになる。

 36歳で引退する前から続けていた介護職や障がい者支援の仕事に就いて15年以上。介護福祉士やサービス管理責任者など、10の資格を習得した。板金屋に郵便局員、ガソリンスタンドなどでは長く仕事が続かなかったなか、なぜキツい職種と言われがちな業界ではやりがいを感じられたのか。

「やっぱり小さい頃からおじいちゃん、おばあちゃん子だったからだと思います。高齢の方と接することで、自分の心の深い部分が穏やかに、優しくなっていくような感覚があった。この仕事は体力的にはキツいし、大変なことも多い。でも、俺にとってはそれ以上に学ぶことがあった。小さな頃から見捨てられるかもしれないという不安があり、常に寂しさを感じていた。その原因は、発達障害であり病気だとも知識を得る過程で気づいたんです。生きづらさを感じてきた人生だったので、今は同じような悩みを持つ人を支える仕事がしたい。そう思っています」

尊敬する兄貴だからこそ負けたくない

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 働き詰めの生活でも金銭的な余裕はない。ただ、日々の充実感は感じている。今でも時折、記胤はこう考えることがある。もし、兄と同居し、ボクシングをはじめていなかったらどんな人生を歩んでいたのか。

「自分の生きる道というか、道しるべを作ってくれたのは兄貴だった。尊敬しているからこそ、昔から変わらず負けたくない!という気持ちは今もあるんです」

 昨年に埼玉県から兄の近くに引っ越し、「いきや」で常連客と馬鹿騒ぎすることが些細な楽しみである。そんな日常を大切に感じ、ありのまま受け入れられるようになった。

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