- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
前・立教大監督→現役復帰の上野裕一郎が「日本最速の39歳」になっていた…「おじさんに負けるなよ」若い選手に発破をかけながら記録更新に挑む
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/01/01 06:01
立教大の監督を解任後、ひらまつ病院で現役選手として活動する上野。ニューイヤー駅伝では恩返しの快走を誓う
「誰にも負けたくない気持ちは昔と変わらないですね。レースでは、僕よりも若い子ばかりで。同じ組に高校生の子もいたりして、もう20歳以上も違うわけです。先日も濵口(大和・佐久長聖)君とラスト1200mまで一緒にいたのに、最終的に7秒も離されてしまいました(苦笑)。
実業団でも入社1、2年目の子は勢いがあるので、なかなか勝てないんですけど、逆にこの年齢の人に負けているようじゃ話にならないという気持ちになってほしいなと思っていますし、『おじさんに負けるなよ』とよくみんなに言っています(笑)」
しんどいとは思わない
自らを「おじさん」と称し、若い選手に発破をかけてきた。ストイックに競技に取り組んでいるが、世間的にはいまだに否定的な見方をする人もいる。それでも自分を追い込んで結果を出してきたが、しんどいと思うことはなかったのだろうか。
ADVERTISEMENT
「しんどいとは思いませんでした。そう思うようなら、監督をクビになった時、陸上の道に進んでいないと思います。僕は陸上が好きですし、自分以上にもっと苦労している人がたくさんいる。それに比べたら陸上をこの年齢までやらせてもらえていますし、そういう環境を与えていただいたのは、すごく幸せなことなので、しんどいとか苦労とか思ったことはないですね」
何が39歳を駆り立てるのか
そんな思いを抱きつつ、ここまで真剣に陸上へ打ち込んでいる姿を見ていると、まるで何かに取りつかれているようにも思えてくる。上野をここまで駆り立てるものはいったい何なのだろうか。
「自分の原点は走ることですし、陸上が好きだからです。ストイックにやれているのは、好きだからこそ。これまでいろんなことがあった中、今も走れているのは、ひらまつ病院を始め、いろんな人の支えがあるからですし、仲間と切磋琢磨して競技力を高めたり、いろんな方と交流をもてるのも陸上があるからだと思っています」
上野が自分の原点を再認識できたのは、今後の人生を歩む上で大事なことのように思える。それを理解していればブレずに歩んでいけるからだ。そのことを理解できる環境を与えてくれたひらまつ病院や周囲の人に対して、上野は何度も、「感謝」を口にした。