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「たぶん最後の全日本なので…」青木祐奈22歳の“涙の引退示唆”はなぜ衝撃的だったのか?「つらい時期も長かった」5歳で始まった競技人生
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2024/12/26 17:05
全日本選手権フリーの演技を行う青木祐奈。この大会の後、引退を示唆した
観る者を惹きつけ、年々評価を高めてきた
そこで1つの決断をくだす。拠点を変更しコーチを変えることだった。
「先生にいい景色をみせてあげたかったです」
幼少期から教えを受けたコーチのもとを離れるのは重い決断だったが、「成長することが恩返しになる」と決意。そこから流れが変わる。
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2022-2023シーズンの全日本選手権で7位になり久しぶりに強化選手に復帰。2023-2024シーズンはNHK杯で初めてグランプリシリーズ出場を果たし、今シーズンのNHK杯で3位と表彰台に上がった。
ずっとこだわってきたトリプルルッツ-トリプルループの精度が上がったのをはじめ、技術面での成長の成果だった。
そればかりではない。自身を、「スケートの、表現することの楽しさを知っている人、と思います」「(青木祐奈の魅力は?)音楽を1つ1つ捉えて表現できるスケーターです」というように、観る者を惹きつける演技は年々、評価を高めてきた。2024年には「滑走屋」「ファンタジー・オン・アイス」と好評を博したアイスショーに出演したのは傍証だ。
青木の「引退示唆」はなぜ衝撃的だったのか?
何度もくじけそうになりながら乗り越え競技に打ち込んできた。近年、少しずつ階段を上がり続け、1月に23歳の誕生日を迎える今もなお、ポテンシャルを思わせる。「この先」を十分感じさせる現在があるから、「引退」を示唆する言葉は衝撃的だった。
これは主観に過ぎないが、取材の場であるミックスゾーンでは、100%決めたことではないようにも受け取れた。ただ、「続ければ?」と安易に周囲からは言えない。続けることの、日々の努力の大変さを知れば簡単には言えない。それでも、続けてほしいと願う人々が多い理由は、分かる。
今年3月に日本大学を卒業し、アルバイトをしながら競技に打ち込んできた。
そして迎えた今年の全日本選手権でも輝きを放ち、青木祐奈は大会を終えた。
(撮影=榎本麻美)