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「嫌なんです…」1年前、令和ロマンは不満そうだった…“M-1優勝会見すら異例”高比良くるまが記者に「できたーっ!」2024年M-1が“神回”になるまで
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byM-1グランプリ事務局
posted2024/12/24 11:20
史上初のM-1連覇を果たした令和ロマン。優勝会見も歴代王者とはひと味違う
まるでマエセツや営業に登場した芸人のようにくるまのテンションがのっけから異様に高く、記者の方を煽ってくるものだから、次から次へと複数人が手を上げている状態が続き、私もM-1の優勝会見で初めて質問の順番が回ってこなかった。
そう、昨年のくるまは会見時も「仕事着」をまとったままだった。
そこへいくと今年の会見も盛り上がったとはいえ、昨年ほどの異様さはなかった。
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前大会後、くるまは会見でこううなだれていた。
「僕らがトップバッターで(最終決戦に)残っちゃったんで。本当は、普段、他のみなさんもめっちゃウケてるんですけど、今日はなんか順番とかがうまくいかなくて……」
昨年の大会は中盤、後半と、大会が進むにつれ尻すぼみになった感があった。本来、芸人がそこに責任を感じる必要はないのだが、くるまはこう言った。
「全体が盛り上がらないと嫌なんです。別にまわりの人のためとか、やさしいとかじゃないんです。エゴがでかいんです。たとえば、他が全部すべって優勝してもまったく嬉しくないし、嫌なんです」
だからこそ、会見でも自らピエロにならずにはいられなかったのだ。せめて、会見まで仕事を完遂しよう、と。
「できたーっ!」昨年とは違うくるま
しかし、今大会は随所に山があった。何よりトップバッターの令和ロマンが会場を暖めたことで、後続の組は重圧もあっただろうが、とてもやりやすく見えた。そして、最終決戦にピークがやってきた。
くるまが充実感をにじませる。
「最終決戦の3組が終わった時点で優勝したぐらい嬉しかったんですよ。できたーっ! って。いいM-1だったなー! って。結果発表の間もセットとかずっと見ちゃって。もう、よかったなーって思ったんで。プラスアルファ、(優勝という)ご褒美をもらえたという感じでしたね」
その言葉を聞き、理解した。会見を適度な熱量で切り上げた理由を。今大会は本番を終えた時点で、「仕事」を全うしていたのだ。