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「余計なお世話だよ、ブス!」上谷沙弥はなぜ悪の世界に? 闇落ちレスラーが語る“中野たむへの憎しみ”「ヒールを辞める気? あるわけねえだろ」
posted2024/12/23 17:20
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「悪の世界を選んだ理由? オマエに関係ねえから。ここで言う必要ねえだろ」
スターダムの上谷沙弥はそう言うと、静かに睨んできた。
「中野たむを信頼していたのに…」
上谷は12月29日、両国国技館で中野たむの持つ赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)に挑戦する。5カ月前、悪魔に魂を売って刀羅ナツコらのH.A.T.E.に加入した女は、うつむき加減に話し始めた。
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「中野たむに挑戦するきっかけは、1年前の『5★STAR GP』での腕の脱臼。あそこでケガをして、しばらく経ってから、あれって私を受け止めなかった中野たむが悪いんだって、そう思ったんだよね。あんなにも私は苦しんだ。その復讐のためだよ」
私怨以外にも挑戦の理由はある。たとえ悪に堕ちても、上谷にとって赤いベルトは唯一無二の価値を持つものだ。
「赤いベルトは白いベルトを落としてから、ずっと目標にしていたもの。スターダムの頂点だけど、同時に女子プロレスの頂点だとも思っている。強さの証明、それが赤いベルト。それが欲しいからプロレス人生をかけて取りに行くと決めたんだよ」
中野への複雑な心境を上谷は語る。
「タッグパートナーだった林下詩美の退団だったり、QQ(クイーンズ・クエスト)がなくなったり、いろんなことがありすぎた。タッグのベルトも巻いていたから、少し時間がかかったけど、心の奥底では中野たむへの思いは消えていなかった。もしかしたら愛情の裏返しで、この憎しみという感情が芽生えたのかもしれない。それだけ、私は中野たむを信頼していたんだよね」
2023年7月23日、中野との『5★STAR GP』開幕戦で上谷は照明用の鉄柱を上ってダイブしたが、着地時に左肘を脱臼した。「あそこから、怒りと憎しみが自分の中で芽生えた」と本人が振り返る一戦だ。
「何の技でもいいよ。どんな技でも受け止めるからって中野たむは言っていた。だから、私は高い所から思い切り飛んだのに、あいつは受け止めてくれなかった。信頼していたのに……」