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「大谷翔平は前日、本調子ではなかったが…」番記者が見た“テレビに映らない50-50”伝説の舞台ウラ「大谷が打席に…ファンの歓声で雷鳴すら」
posted2024/12/22 17:01
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph by
AP/AFLO
WBC制覇のマイアミだが「あまり…」
米国東部時間2024年9月17日午前11時。アトランタから空路、2時間ほどかけて到着したマイアミの空気は湿気を多く含んでいた。キューバなど距離的に近い中南米諸国出身の人々が多く、当たり前のようにスペイン語が飛び交う。そんなこの街でも、話題の中心はドジャースの大谷翔平だった。12試合を残して47本塁打、48盗塁。前人未到の「50-50(50本塁打、50盗塁)」まであと「3-2」に迫っていたからだ。
1試合で量産が可能な盗塁に対し、本塁打は4試合に1本が必要。重圧のかかる場面で大谷がどれだけ本塁打を打てるかが問題だった。例年、大谷は終盤に失速するケースが多い。レギュラーシーズン、最終カードの敵地ロッキーズ3連戦での達成を予想する米記者も少なくなかった。
ただ、不思議な運命の導きが、多くの関心を集めていた。大谷にとって、侍ジャパンを世界一に導いた'23年3月21日のWBC決勝・米国戦以来、546日ぶりのマイアミ、そしてローンデポ・パークでの試合だったからだ。
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同日のマーリンズ3連戦の初戦。0-4の3回1死一塁。マーリンズの先発右腕ダレン・マコーンが投じた、内角低めに鋭く食い込むスイーパー。それもボールゾーンの球だった。衝撃音。打球は右翼2階席に達した。48号2ラン。偉業まであと「2-2」とした。
大谷は試合後の会見で「(重圧は)あまりない」と語り「良い打席を一つでも重ねたい。それはシーズンが始まってから今まで変わらない」と、いつも通りの冷静な口調で言った。
私にとってもWBC以来だった同球場。同じ会見で大谷に懐かしさを尋ねると「ベンチは逆なので。あまり……そこまで一緒の感じはしなかった」と素っ気なかった。確かに当時は準決勝、決勝ともに三塁側ベンチで、今回は一塁側。見かねた別の記者も同じ質問を重ねたが、回答は同じ。帰りの通路を歩きながらその記者と「懐かしいけどなあ……」とぼやき合った。
前日の大谷…じつは3三振で本調子ではなかった
この日は日本文化を紹介する恒例の「ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト」。多くの日本人が駆けつけ、攻守交代時は和太鼓演奏などで盛り上がった。その中で放った本塁打だったが、その他の打席は球審の微妙な判定にも泣かされ、3三振。
「自分がボールだと判断してストライクとなった時にそこを捨てるべきか。今日は審判に合わせた打席が多かった」
大谷は決して本調子ではなかった。