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「可愛い…!」「天才的なアイドル性を持ってる」中野たむが身悶えした“新人女子レスラー”…対戦相手すらときめかせる、玖麗さやかの魅力
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/11/30 17:12
中野たむとともにタッグリーグ戦に出場している玖麗さやか
「天才的なアイドル性を持ってる」
玖麗はもともと美大を目指して勉強していた。専攻は油絵。ところが知り合いに誘われて見に行ったスターダムに夢中になり、ジュリアvs.中野たむ(5★STAR GP 2022決勝戦)を生観戦した帰りに新人募集に応募する。デビューすると、たむ率いるユニット「コズミック・エンジェルズ」加入を果たした。
「私の横にいたら、玖麗はきっともの凄いスピードで成長するはず。玖麗の初勝利の相手は(トップ選手でデビュー戦の相手でもある)上谷沙弥。とんでもない相手から白星を挙げる可能性があると思ってます」
タッグリーグ戦開幕前、たむが言ったように玖麗は結果を出した。リーグ戦は8戦中7戦を終えたところで3勝4敗。うち2戦で玖麗がフォール勝ちしている。しかも、勝った相手は鹿島沙希、琉悪夏とどちらも格上だ。
「玖麗は初めて会った時からビビビとくるものがありました。天才的なアイドル性を持ってる選手なんです。アイドルの経験はないんですけどね」
見ていて自然に応援したくなる。それがたむの言う、玖麗のアイドル性だ。
「上谷から初勝利を挙げた時も、その日一番の盛り上がりで。玖麗コールも起きてましたね。みんなが玖麗に夢を見てるんだなって」
業界で“アイドルレスラー”といえば中野たむなのだが、そのたむが認める玖麗のアイドル性は相当なものだと言うしかない。
たむと玖麗、2つの“アイドル”像
「私と玖麗の最大の違いは、陰か陽か。私は陰、玖麗は陽なんです。私はドロドロとした感情をぶつけるタイプなので」
たむがプロレスラーとして成長している時期、すぐそばに「天性のスター」がいた。岩谷麻優と星輝ありさだ。2人に負けない存在感を出すため、たむが武器にしたのがアイドルとしての経験、その立ち居振る舞いだった。言ってみれば後天的な、持たざる者の武器としてのアイドル力。
“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムのチャンピオンだった時代は、嫉妬や妬みまで含めた汚い感情も曝け出し、インパクトのある試合を連発した。たむは白いベルトを“呪いのベルト”と呼んでいる。
そんなたむが玖麗に感じているのは、先天的なアイドル性。人として自然にそうなっているという状態だ。
「玖麗はまっすぐで純粋で優しくて、まさにヒロインなんですよ。濁りのないヒロイン。そういうところに凄く刺激を受けてますね。“こういう闘い方、存在の仕方があるんだ”と学ばせてもらってます。私は濁りまくったヒロインなので(笑)。
玖麗はヒールになった上谷に対しても“元の上谷さんに戻ってほしい”とまっすぐに言う。それは私にはない部分なんです」