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「弱かったけど、ずっと一緒に戦ってきた」残留オファーを断り中日退団のビシエド…盟友・柳裕也が初めて明かす「早朝6時の空港見送り秘話」
posted2024/11/09 11:04
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Yuya Yanagi
10月7日、午前6時すぎ。人影もまばらな中部国際空港国際線ロビーに、中日の柳裕也の姿があった。旅行ではない。飛行機にも乗らない。仲間を見送るためだった。
最終戦の“サプライズ”
時計の針を12時間ほど巻き戻す。中日は今シーズンの最終戦を終えた。DeNAとの試合に勝つか引き分ければ5位だったが、負けたことにより3年連続の最下位が確定した。立浪和義監督の退任あいさつを終え、ファンへの感謝のセレモニーは全員による場内一周でフィナーレを迎える。
ファンの声援と拍手のボルテージが一気に上がったのは、一塁ベンチから出てきて選手の列に合流するダヤン・ビシエドの姿を見つけた時だった。当日の一軍メンバーではなかったから、参加する必要はない。サプライズ。同時にその意味をファンは瞬時に理解した。
「まだ打てるのに…」
直後に中日球団はビシエドの今シーズン限りでの退団を公表。報道各社も速報で伝えた。9年間在籍し、通算1012安打549打点は球団の歴代外国人では最高の記録だ。首位打者、最多安打を獲得した打撃だけでなく、ゴールデン・グラブ賞も受賞した名一塁手でもあった。来日9年目の今シーズンからはいわゆる「日本人扱い」となり、さらに存在価値は増すはずだった。しかし、出場15試合、9安打、1本塁打に終わり、契約は更新されなかった。