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「こんないい将棋を!」天才少年・藤井聡太13歳vs佐々木勇気21歳に谷川浩司が驚いた日から8年…“一本取った”藤井が竜王戦先勝の要因は? 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2024/10/18 06:00

「こんないい将棋を!」天才少年・藤井聡太13歳vs佐々木勇気21歳に谷川浩司が驚いた日から8年…“一本取った”藤井が竜王戦先勝の要因は?<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

セルリアンタワー能楽堂で行なわれた竜王戦第1局

 猛烈な攻め合いから難解な終盤に突入し、両者は秘術を尽くした攻防を繰り広げた。解説を務めた谷川九段は「こんないい将棋を指されたら、後で指す棋士はつらい」と苦笑した。そして、佐々木が大激闘を制して勝った。なおこの対局は、藤井少年の取材にテレビ、新聞のメディアが駆けつけていた。翌年にプロ公式戦で連勝街道を突っ走り、「藤井フィーバー」が巻き起こる前兆となった。

 なお、佐々木と藤井は同じ板谷一門の棋士である。東海棋界の発展に尽力したのは板谷四郎九段、進九段の親子棋士である。佐々木は父・板谷の弟子である石田和雄九段の門下。藤井は息子・板谷の弟子である杉本昌隆八段の門下。板谷父子は東海棋界や一門からタイトル保持者が生まれることが悲願だっただけに、竜王戦で一門の棋士同士が初めて対戦したことを、泉下で大いに喜んでいるだろう。

スパゲティにハンバーガー…ダブル注文の新手

 今期竜王戦第1局の前夜祭で両対局者は、次のように語った。

 佐々木「藤井竜王の将棋は、棋譜を見ただけではわからない。実際に盤を挟んで膨大な変化を読み合わないとわからない強さがある。できるだけ終盤までいい勝負で戦いたい」

 藤井「佐々木八段の将棋は、攻めの鋭さが一番の特長。それに受けの手厚さや粘り強さもあって、内容が非常に充実している。互いの読みがぶつかり合う面白い将棋を指したい」

 第1局では「振り駒」が行われ、藤井の先手番に決まった。

 佐々木は2日制・各8時間の持ち時間の対局は初めて。ほかに和服の着用、おやつの注文、封じ手も初体験だ。

 戦型は予想通り、角換わり腰掛け銀になった。ともに研究を重ねているので短時間で駒がぶつかり、実戦例がある局面に進んだ。その後、佐々木は公式戦で前例のない手をわずか1分で指した。事前に研究した手をぶっつけたようだ。

 10時に午前のおやつが出され、佐々木はシュークリームとメロンケーキ。12時30分からの昼食休憩では、ミートソースのスパゲティにハンバーガー。2日目の食事もダブル注文の「新手」が続いた。一方の藤井はいつものように一品ずつで、午前のおやつはプリン、昼食は牛ステーキ重(※いずれも飲み物込み)。

 

 序盤の指し手は早かったが、藤井が歩交換した6筋の歩を自陣に打つと、佐々木は予想しなかったようで大長考に沈んだ。そして昼食休憩を挟む2時間14分で、歩交換した3筋の歩を元の位置に打った。何とも渋い展開となった。13時30分の昼休明けから18時の封じ手まで、指し手は4手しか進まなかった。

佐々木が「一本を取られた」と感じたワケ

 佐々木の手番の局面で封じ手となった。

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