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「みんな最後の詰めが…」駒澤大はなぜ出雲3連覇を逃したか? “唯一の勝てる展開”アンカー勝負での敗因と光明「そこが篠原の甘いところ」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2024/10/16 11:02
最終6区、無念の表情で2位ゴールする駒澤大・篠原倖太朗
トラックでのスピードは篠原が圧倒的に強いので、背中についていき、ラストで勝負をかければ負ける要素はほぼなかった。勝ちに徹したエースらしいレースを藤田監督は期待したが、プライドなのか、何なのか……勝ちたい気持ちはあったはずだが、冷静に勝負に徹することができなかった。
「そこが田澤や(鈴木)芽吹と違って篠原の甘いところでもあります」
藤田監督が思い出すのは、2020年の全日本大学駅伝のレースだ。8区のアンカーで田澤廉(駒澤大)と名取僚太(東海大)のマッチレースになった。藤田は「早く行け」と思っていたが、田澤はうしろについてじっと我慢し、名取の様子を見て、自分が出るタイミングをうかがっていた。そして、ラスト1.2キロになった時、勝負とばかり一気に前に出た。
「これができるかどうかなんですよ。その瞬間瞬間で自分で判断して、勝負して、勝たないといけない。やっぱりチームを勝たせないとエースではない。駒澤のエースになるために田澤も芽吹も苦労して、乗り越えてきた。篠原が駒澤でエースを張るのであれば、この悔しさを乗り越えていかないといけない」
藤田監督は、期待感を込めて、そう言った。
今後に繋がる光明
今回敗れはしたが、レースを見れば収穫もあった。
今季は春のトラックシーズンに結果が出ず、流れが良くない中、夏に危機感を持って合宿をこなしてきた。今回、佐藤を抜きにして、1区から5区までレースを作り、トップ争いをできたことは大きな収穫だろう。また、駅伝デビューを果たした帰山、島子が好走し、出雲駅伝終了後の記録会では谷中晴(1年)が13分49秒71の自己ベストをマークして、トップを獲ったのも今後に繋がる。
「夏合宿を終えて、ここまで変われたのは自信を持っていい。だが、負けた悔しさは絶対に忘れてはいけない」
藤田監督は、そう語る。
出雲では3連覇を逃したが、全日本では5連覇がかかっている。國學大は力のある選手たちが持ち味を発揮して優勝したが、駒澤大は新しい戦力が台頭し、チームとして戦える自信を得ることができた。負けはしたが、ただでは転ばない。駒澤大は、今後の駅伝において勝利に繋がる光明を得たと言えるだろう。