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「みんな最後の詰めが…」駒澤大はなぜ出雲3連覇を逃したか? “唯一の勝てる展開”アンカー勝負での敗因と光明「そこが篠原の甘いところ」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2024/10/16 11:02
最終6区、無念の表情で2位ゴールする駒澤大・篠原倖太朗
山川は、厳しい表情で、こう言った。
「圭汰が故障して出られなくなり、その分、篠原さんが何とかしてくれるだろうという気持ちがみんなにあったと思います。やっぱり特定の選手に頼り切ってしまう、人任せにしてしまうのは良くないですね。自分も含めて各区間を任された選手は、1位で帰ってこないと、という気持ちで走らないといけないと改めて思いました」
駅伝を走る選手は、それぞれがエースを越えていくぐらいの気持ちになれるかどうか。そういう強い気持ちが足りなかった。
そして、涙にくれたエースだ。
「申し訳ないです。みんな100点で走ってくれました。(負けは)自分のせいだと思います。(ヨギボー記録会からの疲れは)関係ないです。自分が弱かったです」
篠原は、エースとして主将として、全責任を背負い込んでいた。
篠原のレース運びは万全だったか
「今回の負けは、篠原の責任ではない。そこまでリードを作れなかったのが敗因です」
藤田監督はそう言うものの、篠原のレース運びに、エースらしからぬ甘さがあったことも否めない。
4秒差を詰めて平林に追いついた後の展開だが、あそこでなぜ並走だったのか。
1.4キロ地点で篠原は平林に追いついた。そこからのセオリーは、まずは相手の背後について走ることだ。うしろにつけば相手の力をうまく使って走ることができ、相手の様子を見て、自分から仕掛けられる。戦術的に優位に立てるが、篠原は、うしろにつくのは御免とばかり、真っ向勝負を挑んだ。確かにそこにはエースの矜持を感じるが、藤田監督は別の見方をしていた。
「並走したのは、うしろについてラクはしないという、プライドがあったからでしょう。でも、並走すると表情を見られるんです。顔が歪んだら相手に行かれるわけです。でも、うしろにつけば余裕なのか、きついのか見えない。勝つためには、そこは割り切って自分が優位に立って仕掛ける展開をしないと……。でも、逆に相手に表情を読まれ、揺さぶられて突き離されてしまった。レースは、そんなに簡単に勝てるもんじゃない。平林の術中にハマってしまいました」