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「嫌がられるセッターに」女子バレー岩崎こよみ(35歳)が、荒木絵里香にいま明かすパリ五輪の真相「あのゲームであの1点が取れていたら…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/10/18 17:00
大好評シリーズ動画「Number Volleyball Night」でバレーボール女子日本代表元キャプテンの荒木絵里香(左)がパリ五輪日本代表セッターの岩崎こよみに迫った
岩崎 そこでフルセットにいっていれば、あとの結果が同じだったとしても予選突破できたかもしれないけれど……、しょうがないですよね、結果ですから。
荒木 ポーランド戦を落として迎えた2戦目のブラジルは、ネーションズリーグでは勝った相手でした。
岩崎 真鍋監督も予選で一番カギになる試合と言われていたし、選手も、ポーランド戦では負けたけどそれで終わったわけではないし、切り替えて頑張ろうという感じでした。ネーションズリーグでよかったというイメージをもって入りましたが、パフォーマンスも迫力も全然違った。ネーションズリーグで日本に負けていたからというのもあるのでしょうが、体感的にはポーランド以上に違った。
荒木 気迫というか熱量というか。1点獲るごとに圧がかかってくるのがネット越しでもバンバンに感じられていました。
一発勝負でピークに持ってくる感じは見習いたい
岩崎 もともとブラジルはそういうチームですが、五輪ではその比ではなかった。ネーションズリーグでは私でもブロックでタッチを取れていたけれど、五輪では全然触れず、上から打たれていた。
荒木 高さが違う? 気迫だけじゃなくて?
岩崎 高さが違っていましたね。コースも違う。あんなインナースパイクはなかったのに、Bクイックでもめちゃくちゃ打ってきていた。日本人はネーションズリーグのような長丁場の大会で毎回コンスタントに同じような力をコツコツ出すことに長けていると思うのですが、一発勝負にかける、ピークをもってくる感じは見習いたいですね。どうしたらそんなことができるんだろう。
荒木 そこにメダルを獲っていくチームとの違いを感じます。ネーションズリーグではボロボロと崩れていっていたけど、五輪では崩れなかった。
岩崎 サーブレシーブでも崩れなかった。
荒木 アウトサイドヒッターのアナ・クリスティーナ・デ・ソウザ選手、こんなにパスを頑張ってた?って思ったし、ミドルのブロックがすごくよかった。
岩崎 そうなんですよ。ネーションズリーグの時はライトからの攻撃がすごく決まっていたし、ブラジルにはライトから対角に打つのがいいというデータも出ていたので、五輪でもライトから打たせるプランだったのですが、いざ決まらなくなった時、次のプランがうまく立てられなかったのが反省点です。
荒木 手を読むのが後手後手になってしまった。
岩崎 相手もあれだけ決められれば対策してきますよね……。
とにかく悔いなく戦えるように
荒木 そして第3戦。この試合も難しかった。ドミニカ共和国がオランダに3‐1で勝った結果を受けてのケニア戦となり、どのようなミーティングや話をしてゲームに入っていったのですか。みんなで見ていたの?
岩崎 見ていました。バスが試合会場に到着するころにオランダがセットポイントを獲ったんですよね。それで、「あ、フルセットまでいくね」という雰囲気だったんですけど、着くと同時ぐらいにドミニカがダダダダっと追い上げてきて、勝って。翌日のアメリカ対フランスの結果次第ではありましたが、ほぼほぼアメリカが勝つだろうと(フランスがアメリカにストレートで勝つと日本は準々決勝に進出)。
(古賀)紗理那が引退を表明していたので、本人は言わないですけど、周りは彼女にとって最後の試合になるって思っていましたし、自分たちにとってもパリ五輪でできる最後の試合になるから、とにかく悔いなく戦えるようにというのはありましたね。でもスタッフは結構、落ち込んでいるというか、暗いなぁと思いました。