イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー「こんな野球、見たことない」 高校女子選抜戦、イチローがマウンドで感じていた“恐怖の正体”…松井秀喜も「かなりビビりました」
posted2024/09/26 17:04
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
JIJI PRESS
心穏やか。野球の試合を取材し、こんな気持ちになったのはいつ以来だろうか。
フィールドにはメジャーで長く取材したイチロー、松井秀喜、松坂大輔が、おじさんとなった体に鞭を打ち、高校野球女子選抜相手に真剣に、必死にプレーをしていた。
来月51歳を迎えるイチローが最速137キロ、141球の熱投で9回を投げ切れば、松井秀喜は初回早々に中堅の守備で右足太もも裏に肉離れを起こしながらも、最終打席となった8回に右翼へ3点本塁打を放ち感動を誘った。44歳になったばかりの松坂大輔にしても、左翼守備で軽快な動きを見せ、打撃では光るセンスを見せていた。
イチロー「なにが嬉しいかって…」
得られた満足感は、彼らが真剣にプレーをする姿を久しぶりに見たからなのか。記者席で自問自答しているとき、場内インタビューで答えるイチローの言葉が聞こえてきた。
「この試合はみなさんでこの空気を作っていただいている。誰が欠けてもこの空気はできない。感動しています」
東京ドームには2万8483人もの観衆が集まった。オリックス時代のイチロー51、巨人時代の松井55、西武時代の松坂18、懐かしいユニフォームに身を包んだファンの方が大勢いた。そのファンの方々なくして、このドラマは生まれない。イチローは続けた。
「なにが嬉しいかって、女子選手たちの野球への敬意を最も感じる試合なんです。いろんなレベルで野球をしてきましたけど、これだけの野球への敬意、相手への敬意、チームメートへの敬意、お客さんに対する感謝の気持ち。これほどに詰まった野球は、僕は、知らないです」
メジャーの世界で頂点を極め、来年には日本人初の米国野球殿堂入りが確実視されているイチローが訴えかけた、高校野球女子選抜の選手たちが持つ野球への敬意。心が穏やかになった理由が少しずつわかってきた。