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卓球PRESSBACK NUMBER
「まさか五輪で対戦するとは…」早田ひな、平野美宇、伊藤美誠を育てた韓国の名将が新星シン・ユビン(20歳)に伝えた“打倒・日本”の対策とは?
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/09/20 11:05
パリ五輪で平野美宇、早田ひなと激闘を繰り広げた20歳シン・ユビン(左)。日本をよく知る呉光憲監督の助言に感謝した
2021年代表監督の下半期の公募に応募すると、韓国卓球協会は「日本の卓球をよく知る人物」に“立て直し役”として白羽の矢を立て、2022年から正式に女子韓国代表の指揮官となった。
しかし、周囲から聞こえてきたのは疑念の声ばかり。特に「韓国代表出身ではないやつが、なぜ監督なんだ」という批判は各方面から飛び交った。
「本当に苦労しました。杭州アジア大会でユビンとチョン・ジヒがダブルスで金メダルを、団体戦で銅メダルをとっても心配の声が続いていましたから」
今年2月の世界選手権でメダルを逃した後は辞任論まで出た。
「10日間、すべての連絡を絶って家にこもりました。コーチ陣が何度も説得してくれたので、五輪までやってみようと決意したのです」
必ず日本に勝たないといけない
“元代表”という肩書きが指導力に直結しないのは分かっていても、韓国スポーツ界にはこうした権威主義がまだ根強く残る。想像もできないほどの重圧と戦いながら、とにかく結果で黙らせるしかなかった。そのためには、かつての教え子が多く揃う日本に勝たなければいけない。
「私が初めて韓国代表監督に就任したとき、日本の選手たちとの実力差がかなりあると感じていました。韓国が世界選手権で準決勝、決勝まで勝ち上がるには、必ず日本に勝たなければならない。日本がもっとも高い壁だったので、そこを乗り越えなければならない。そのためには私も日本に勝つための練習と対策を始めないといけないと決心しました」
日本に対して、情が移ることはなかったのだろうか。
「2002年日韓W杯で韓国代表を指揮したオランダ人、フース・ヒディンク監督を覚えていますか? 記者から『もしオランダと韓国が戦ったら、どちらに勝ってほしいと思いますか?』と聞かれた時、『私は確かにオランダ人で代表監督も務めた。しかし私がいま所属しているのは韓国だ。当然、私は韓国が勝つのを祈る』と言いました。私はその言葉がものすごく好きで、同感です。日本のジュニア監督のときは韓国に勝ちたかった。今は韓国の監督なので日本に勝ちたい。どの監督もみんな同じ気持ちだと思います」
“打倒・日本”を掲げた戦いが始まった。
(後編に続く)