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藤井聡太22歳と“プロ初対決”「貴重な機会を…」夢の女性棋士まで2勝・西山朋佳29歳を元A級棋士が絶賛「私が最も強かったときと同じくらい」 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2024/09/19 11:05

藤井聡太22歳と“プロ初対決”「貴重な機会を…」夢の女性棋士まで2勝・西山朋佳29歳を元A級棋士が絶賛「私が最も強かったときと同じくらい」<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

NHK杯で藤井聡太竜王・名人と対局した西山朋佳女流三冠

 以前に試験対局を務めたある棋士は、「勝っても負けてもあまり評価されない難しい対局です。棋士になったばかりだったので、注目されている対局に臨めることをモチベーションにしました」と語った。

 棋士編入試験第1局(西山女流三冠-高橋四段)は9月10日に東京の将棋会館で行われた。多くのメディアが取材に駆けつけて関心の高さがうかがわれた。「振り駒」の結果、高橋の先手番に決まった。なお、西山と高橋は奨励会の三段リーグで1期だけ重なったが対戦はなかった。

 高橋は今年4月に棋士になった。6月に開かれた将棋連盟の通常総会で新四段たちが自己紹介したとき、高橋は「師匠(加瀬純一七段)にまず感謝したい。カラオケ好きの師匠のように、自分もうまく歌いたい」と挨拶すると、サザンオールスターズの『真夏の果実』を歌い出した。途中で手拍子を求め、歌い終わると棋士たちからアンコールの声が上がった。前代未聞の光景だった。

西山が“角を捨てた”強烈な一手とは

 対局に話を戻そう。

 振り飛車を武器にしている西山は、本局では△3二飛と三間飛車に振った。居飛車党の高橋が穴熊囲いを目指すと、西山は積極的に動いて早くも駒がぶつかった。高橋は中盤で敵陣に角が成り込み、▲7五馬と中段に引いた。手厚い棋風の高橋らしい展開となった。西山は3筋から攻め込んで飛車交換した。高橋は終盤で▲9五歩と突き、相手の守りがうすい9筋から端攻めにいった。かなり厳しいように思えたが、西山はそれを逆用して強気に応戦した。

 第1図は、終盤の寄せ合いの局面の部分図。西山が△9七角と捨てたのが強烈な一手だった。▲同玉は△9六歩と香を取り、▲8八玉△9七歩成▲同玉△9九飛▲8八玉△9四飛成で、相手の9筋からの攻めを緩和させる狙いだった。

 実戦は第1図から、▲9八玉△9六歩と進んだ。単に△9六歩は、先手の▲9三銀以下の王手で後手が△8四玉と逃げた局面で、▲7五銀と出て詰む。しかし△9七角と打っておけば、角が五段目に利いて詰まない。

最後までよくわからなかったのですが…

 西山の△9七角はまさに剛腕といえる攻防手で、高橋の寄せをきわどくかわして勝ち筋となった。しかし、以後は明確な寄せや詰み筋があったのになぜか逃し、形勢は少しもつれた。やはり相当なプレッシャーが生じたようだ。それでも何とか逃げ切って勝った。

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