酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平「50-50」間近の中で称えたい大記録「35-35を2回」秋山幸二、張本勲は通算「504-319」だが…今季NPB「10-10」は2人だけ、誰?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki/Makoto Kenmizaki
posted2024/09/18 17:01
大谷翔平の「50-50」挑戦の今こそ、スピードとパワーを兼備して「35-35」を二度クリアした秋山幸二の偉大さを称えたい
さらに2015年にソフトバンクの柳田悠岐(率.363、34本、32盗)、ヤクルトの山田哲人(率.329、38本、34盗)を記録した年には「トリプルスリー」が流行語大賞に選ばれるなど、すっかり大記録扱いになった。なおトリプルスリーは山田哲人が計3回記録したのをはじめ10人が12回記録している。
しかしMLBの「30-30」と同様に、秋山幸二より前の達成者である1950年、松竹の岩本義行、同年の毎日・別当薫、1953年の西鉄・中西太、1983年の阪急・簑田浩二は、ほとんど注目されることはなかった。
「30-30」はトリプルスリーよりも打率の条件がない分、クリアは容易だ。昨年まで12人が延べ18回記録している。
しかし「40-40」は、NPBでは達成者がいない。「35-35」は3例ある。
1987年 秋山幸二(西武)43本38盗(率.262)
1990年 秋山幸二(西武)35本51盗(率.256)
1953年 中西太(西鉄)36本36盗(率.314)
1987年の秋山が最も「40-40」に近かった
なんと「35-35」を記録したのはすべて「ライオンズ」の選手だ。
一番惜しかったのが、1987年の秋山である。この年の西武ライオンズはリーグ3連覇を達成、秋山は高卒2年目の清原和博や石毛宏典と中軸を組んだが1番を打つことも多かった。
最終10月21日の近鉄戦で2盗塁して38盗塁としたが、もし「40-40」が目標として存在していたら、秋山はこの記録を比較的容易にクリアしていたのではないか。NPBではまだ「40-40」が発見されていなかったから、秋山はこの記録を目指さなかったとも言える。
MLBではキャリアの目標として「300-300」つまり300本塁打、300盗塁がある。これも「300-300クラブ」という言い方をしている。
現在、8人がクラブのメンバーになっている。
〈500-500〉
バリー・ボンズ 762本514盗
〈300-300〉
アレックス・ロドリゲス 696本329盗
ウィリー・メイズ 660本339盗
ボビー・ボンズ 332本461盗
アンドレ・ドーソン 438本314盗
カルロス・ベルトラン 435本312盗
レジー・サンダース 305本304盗
スティーブ・フィンリー 304本320盗
ただ1人、バリー・ボンズが500-500をクリアしている。この選手は歴代最多本塁打を打ち、シーズン最多本塁打記録(73本)も記録している。その上「500-500」、掛け値なしに最強打者だといえるが、薬物疑惑のために殿堂入りが絶望的になっている。
大谷が「200-200」をクリアする可能性も高いのでは
「200-200」は「300-300」8人も含めて54人がクリアしている。このうち現役選手(以下、大谷以外すべて9月17日時点)は、大谷の元同僚でエンゼルスのマイク・トラウト(378本212盗)、アストロズのホセ・アルトゥーベ(228本315盗)、パイレーツのアンドリュー・マカッチェン(319本219盗)、ブリュワーズのクリスチャン・イェリッチ(204本205盗)の4人だ。
大谷翔平は219本134盗。クリアする可能性は高いだろう。
実は「300-300」は、日本の記録マニアには結構知られていた。