大坪飛車角（大坪清隆）、アントニオ猪木（猪木完至）、上田馬之助（上田裕司）、林牛之助（林幸一）、田中忠治（田中政克）、松岡巌鉄（松岡政雄）、星野勘太郎（星野建夫）、山本小鉄（山本勝）、大熊熊五郎（大熊元司）、高崎山猿吉（北沢幹之）、小鹿雷三（小鹿信也）。

　何と言っても特筆すべきは、アントニオ猪木を命名したことである。このときのことを上田馬之助は自著で次のように回想している。

《猪木の番になると「ウーン」と考え込んで、「お前はブラジル帰りだからグッと洋風なのがいいな」といって「うん、“死神の酋長、アントニオ猪木”ってのはどうだ？」といった。そのとたん、ピィーッと泣き声を上げて、猪木は泣いてしまったよ。（中略）それから、急に猪木は豊登たち幹部連中の前に土下座して「お願いします！　アントニオ猪木はいただきますから、どうか“死神の酋長”だけは取ってください！」といってまた泣き出してしまった》（『男は馬之助』学習研究社）

力道山vsデストロイヤー。豊登（左）と アントニオ猪木（右）に助けられ、会場を後にする力道山　©Sankei Shimbun

やくざに刺され…39歳で急死した力道山

　かくして、力道山に次ぐスターの座を不動のものとした豊登のことを、“力道山未亡人”である田中敬子は次のように回想する。

「豊登さんのことは、主人（力道山）はすごく可愛がっていて、ギャンブル癖も面白おかしく話していましたね。『あいつは、もうしょうがねえなあ』って感じで。例えば、ある巡業先で、豊登さんが賭け事で大負けしてすっからかんになったことがあったそうです。そのときも、主人が若い選手に『どうせ、トヨのやつ負けてるだろうから、これ持っていってやれ』って言って、お金を持って行かせたりしたって。それくらい可愛がっていましたね。実際、気持ちのいい人だったから、豊登さんの場合は人柄で愛されていたと思います」

　その豊登が殊更に可愛がったのが、その力道山の付き人だったアントニオ猪木だった。猪木らプロレスラーと同じ合宿所で寝食を共にした、元プロボクサー「琴音竜」こと琴音隆裕は次のように証言する。

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