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「20年ぶり歴史的勝利」を叶えた選手の本音…長谷川・石井組が明かす“日本ビーチバレーの現状「環境はよくなった」「ガツガツした選手は…」
posted2024/09/03 11:01
text by
吉田亜衣Ai Yoshida
photograph by
VolleyballWorld
フランス・パリの心臓部であるエッフェル塔。その下に広がる緑豊かなシャン・ド・マルス公園内に1万2000人収容のビーチバレー競技が行われるエッフェル塔スタジアムが特設された。
男女各24チームが出場する予選ラウンドは、朝・昼・夜と3セッション制で行われ、セキュリティゲートを抜けると芝生の上で寝そべって休憩する人々、親子でバレーボールゲームを楽しむ人々で溢れていた。いざ試合が始まると、会場の音楽に惹きつけられるようにスタジアムは次第に人で埋め尽くされていく。
エッフェル塔がそびえ立つ、そんな美しく雄大な舞台で、ビーチバレー日本代表の長谷川/石井組は躍動した。
「東京五輪は無観客だったので、1万人以上の規模の前でプレーするのは初めてでした。ボールを上げるたびに『ワー!!』と大歓声が上がるので、緊張しながらも『ここで絶対決めなきゃ!』と思いました」(石井)
アジア大陸予選で優勝し日本女子ビーチバレー代表が自力で五輪出場したのは北京五輪以来、16年ぶりだった。アジア代表として挑んだ長谷川/石井組は、予選ラウンドで過去の対戦成績5戦全敗のリトアニアに1勝を挙げ、女子ビーチバレーとしてアテネ五輪以来、20年ぶりの勝利をあげた。
この勝利によって3位グループの敗者復活戦に臨んだ長谷川/石井組はランキング上位の地元・フランスチームを倒し、決勝トーナメントへ進出。1回戦でブラジルに敗れ9位タイに終わったものの、予選ラウンドを抜けたのはシドニー五輪以来、24年ぶりのことだった。
ペア結成は昨年11月頃
長谷川と石井がペアを結成したのは、昨年11月頃だった。そこから第一目標のアジア大陸予選までおよそ8カ月という時間しか残されていなかった。チームの専属コーチである望月剛氏はこう話す。
「2人とも2014年頃にインドアからビーチに転向しましたが、もっと早く組めばよかった、という問題でもなく、来るべきタイミングで出会いペアを組むことになった。成長と時間は比例しているのでどうしてもチーム作りは時間がかかることもありますが、このペアにとっては時間が足りない、選手の性格や習慣を見極めてできることを絞って練習に取り組んできました」
石井より4歳年上の長谷川は、小学校から大学までトップチームでプレーしNECレッドロケッツの主将を務めた実績を持つ。石井も久光製薬やJTなどVリーグ(現SVリーグ)で活躍。転向後、先に世界の舞台へ足をかけたのは石井だった。2018年には当時のパートナー・村上めぐみと最高峰大会でベスト8入り、2021年東京五輪出場を果たした。
それ以降も、パリ五輪出場を目指してきた2人はそれぞれのチームで当時のパートナーをけん引してきた。しかし、石井のパートナーだった溝江明香が体調不良に見舞われ、ペアを解散。石井が長谷川にオファーして結成されたペアは、五輪直前に選んだ最後のカードだった。