野ボール横丁BACK NUMBER
「カブレラって、西武のカブレラ?」甲子園ベスト4にいる“筋肉隆々スラッガー”…関東一の高橋徹平とは何者か「暇さえあればウエイト」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/20 11:02
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「とりあえず柵は越えたかなと思いました。ちょっと深いところだったんですけど」
打球は新基準バットの控えめな金属音を残し、甲子園のもっとも深い左中間スタンドの最前列に落ちた。
通算61号を放った高橋は一塁を回ったところで一度、三塁ベースを回ったところでもう一度、ガッツポーズをつくった。さらにはベンチに戻るなり、今度は両腕を突き上げた。他の選手もそれに呼応するように大声を張り上げながら高橋のポーズを真似る。少し間を置いて、高橋は「しゃーっ!」と両拳を腰の位置まで引いた。他の選手もそれに続く。ヒーローになった者のみがやることを許される歓喜の「筋肉ポーズ」だ。
憧れの選手はまさかの…
高橋はここまでの2試合で単打2本に抑え込まれていた。3試合目にして、ようやく4番らしい仕事ができた。
「やっと自分が(筋肉ポーズを)できたなと思いました」
この先制点で流れが生まれ、関東一は最終的に2−1で逃げ切った。
高橋に憧れの選手を尋ねると「カブレラです」と即答した。一瞬、いつの時代の、どの球団のカブレラかわからなかった。不安になり取材時間の最後にもう一度、高橋のところへ行き、確認した。
――カブレラって、西武のカブレラ?
「そうです」
そう言われてみると、彫りの深い顔立ちと筋骨隆々としたシルエットは、まさに2000年代の西武打線を支えた主砲、アレックス・カブレラを彷彿とさせた。