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「もう一度プールに戻りたい」池江璃花子が辛い治療を乗り越えるために頼った気持ち「未来が一夜にして別世界のように…とてもきつい経験でした」

posted2024/07/27 11:04

 
 「もう一度プールに戻りたい」池江璃花子が辛い治療を乗り越えるために頼った気持ち「未来が一夜にして別世界のように…とてもきつい経験でした」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

白血病の公表から5年ーー再びプールに戻るまでの過程を綴った著書『もう一度、泳ぐ。』を刊行した池江璃花子

text by

池江璃花子

池江璃花子Rikako Ikee

PROFILE

photograph by

Asami Enomoto

 白血病と診断されてから5年ーー「退院して泳ぎ始めた時には絶望しかなかった」という池江璃花子は、いかにして暗闇を抜け出し大舞台に戻ってきたのか。もう一度強くなる過程を池江本人が赤裸々に明かした著書『もう一度、泳ぐ。』(文藝春秋刊)より内容を抜粋して紹介します。<全2回の第2回/第1回も公開中>

新しくなった国立競技場でスピーチ

【2020年7月】

 新型コロナウイルスの影響で来夏に延期になった東京五輪の、開会式1年前に当たる7月23日、記念イベントに出演しました。11時半からの練習のあと、国立競技場に向かいました。

 6月下旬に、新しくなった国立競技場を初めて訪れた時は、ここでオリンピックが開催されるんだ……と実感し、その大きさと雰囲気に圧倒されました。

 まずはリハーサル。完璧とはいえないまま午後8時からの本番となりました。イベントは無観客で、ネット中継されています。失敗は許されません。めちゃめちゃ緊張して、フィールドの中央に向かって一人で歩いていきました。

 スピーチには、アスリートや、何かと闘っている人たちに少しでも勇気や希望を届けられたらな、というメッセージを込めました。

 今日は、一人のアスリートとして、そして一人の人間として少しお話しさせてください。

 本当なら、明日の今頃、この国立競技場では「TOKYO 2020」の開会式が華やかに行われているはずでした。

 私もこの大会に出るのが夢でした。

 オリンピックやパラリンピックはアスリートにとって、特別なものです。

 その大きな目標が目の前から、突然消えてしまったことは、アスリートたちにとって、言葉に出来ないほどの喪失感があったと思います。

 私も白血病という大きな病気をしたから、よく分かります。思っていた未来が、一夜にして別世界のように変わる。それは、とてもきつい経験でした。

【次ページ】 もう一度プールに戻りたい、その一心で

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