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「もう一度プールに戻りたい」池江璃花子が辛い治療を乗り越えるために頼った気持ち「未来が一夜にして別世界のように…とてもきつい経験でした」 

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池江璃花子

池江璃花子Rikako Ikee

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photograph byAsami Enomoto

posted2024/07/27 11:04

 「もう一度プールに戻りたい」池江璃花子が辛い治療を乗り越えるために頼った気持ち「未来が一夜にして別世界のように…とてもきつい経験でした」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

白血病の公表から5年ーー再びプールに戻るまでの過程を綴った著書『もう一度、泳ぐ。』を刊行した池江璃花子

 そんな中でも救いになったのは、お医者さん、看護師さんなどたくさんの医療従事者の方に支えていただいたことです。身近で見ていて、いかに大変なお仕事をされているのか、実感しました。

 しかも今は、コロナという新たな敵とも戦っている。本当に感謝しかありません。ありがとうございます。

 2020年という特別な年を経験したことで、スポーツが決してアスリートだけでできるものではない、ということを学びました。さまざまな人の支えの上に、スポーツは存在する。本当に、そう思います。

 今から1年後。オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、どんなにすてきだろうと思います。今は、一喜一憂することも多い毎日ですが1日でも早く、平和な日常が戻ってきてほしいと、心から願っています。

もう一度プールに戻りたい、その一心で

 スポーツは、人に勇気や、絆をくれるものだと思います。私も闘病中、仲間のアスリートの頑張りにたくさんの力をもらいました。今だって、そうです。練習でみんなに追いつけないし、悔しい。そういう思いも含めて、前に進む力になっています。

「TOKYO 2020」

 今日、ここから始まる1年を単なる1年の延期ではなく、「プラス1」と考える。それはとても未来志向で前向きな考え方だと思いました。

 もちろん、世の中がこんな大変な時にスポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよく分かります。ただ一方で思うのは、逆境から這い上がっていく時には、どうしても希望の力が必要だということです。希望が遠くに輝いているからこそ、どんなに辛くても、前を向いて頑張れる。

 私の場合、もう一度プールに戻りたい、その一心で辛い治療を乗り越えることができました。

 世界中のアスリートと、アスリートから勇気をもらっているすべての人のために。

 1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いてほしいと思います。

 競泳選手 池江璃花子

ネットでは批判的な意見も…

 最後は、自分がもしオリンピックでこの場に立てたらという思いと、無事にスピーチが終わった安堵感で涙がこぼれてしまいました。

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