告げられた「うちでプレーしないか」

　1年生の途中で高校を去る。

　数カ月後、斎藤さんが高校をやめたことを知ったいくつかの実業団チームから「うちでプレーしないか」と声をかけられた。

「一番最初にお声掛けいただいたのがイトーヨーカドーでした。『バレーボールの楽しさを知る前にやめてしまうのはもったいないよ』『うちのチームを見に来たら？』と言ってくださった。合宿に顔を出して、衝撃を受けましたね。大人の先輩方のプレーのレベルがとにかく高い。上には上がいるものだなとわかりました」

　目標を失いかけていた斎藤さんの心に再び炎が灯った。実業団チームのプレーの一つひとつにくぎ付けとなり、もう一度、バレーボールに向き合う気持ちが蘇った瞬間だった。

「母子家庭で決して裕福ではなかったので、兄は高校進学をあきらめてすでに社会に出て働いていました。ですから、わたしがイトーヨーカドーに入ることで、バレーボールができる上にお給料もいただけるというのが本当にうれしかったです。お給料でうちの家族を守ることができると思うと、バレーボールに対してもとてもストイックになれました」

　こうして斎藤さんのバレーボール人生は再び動き出した。《インタビュー第2回に続く》

（撮影＝深野未季）

#2に続く

「バレー界のゴクミ」と呼ばれ…17歳で五輪候補に選ばれた元日本代表・斎藤真由美が感じた「知らない人が自分を知っている」という怖さ