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DeNA・度会隆輝に続く逸材は今年も現れるか!? 第95回都市対抗野球に出場する、プロ注目の4選手とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2024/07/11 11:01
聞こえてくる叱咤は、そりゃあ厳しいものだったが、いちいちもっともなことばかり。是々非々で、そういう「指導」ができることが社会人野球の意義でもあった。そうした雰囲気の中で鍛えられた選手たちだから、野球部を引退して社業に専念するようになっても、人一倍働いて東芝の幹部になった元・部員も多くいた。だから、一般の社員たちも、野球部出身者に一目置いていたし、それが「社会人野球」のあるべき姿であり、そのことは今もまったく変わってはいない。
ドラ1・度会隆輝を翻弄するなどプロ注目選手たちが大会に登場
今年、95回を迎える都市対抗野球大会は、「真夏の球宴」とも呼ばれ、野球ファンにとって、夏の風物詩の一つでもある。
チームにとっては、最大の行事であると共に、プロ野球を目指す選手たちにとっては、またとない登竜門となる。昨年でいえば、この大会での活躍で認められ、ドラフト1位指名でDeNAに進んだ度会隆輝選手(ENEOS)が、その象徴的人物であろう。
今年、度会選手に続く存在は、いったい誰なのか。4人の出場選手を挙げてみた。
昨年の大会で、その度会選手をきりきり舞いさせた江村伊吹投手(バイタルネット→伏木海陸運送の補強選手、177cm、80kg・左投左打・大東文化大・26歳)。あれだけミート能力の高かった度会選手に、全くミートポイントを作らせなかった145km前後のクロスファイアーと打者の近くで変化するスライダーは今年も健在だ。スリークォーター気味の腕の角度からの球筋は右打者からも見にくく、今年も社会人の強打者たちを悩ませるはずだ。
同じ左腕なら、大学当時から注目されていた伊原陵人投手(NTT西日本・170cm、75kg・左投左打・大阪商業大・23歳)の投球内容がレベルアップしている。球速のアベレージが上がった強い速球と小さく鋭く動くカットボールを駆使して、今季は先発、リリーフに大車輪の奮投。調子のムラなく、コンスタントに実戦力を発揮している点も、間違いなくプロに近づいている。
ちょっと異色の存在なのが、木下里都投手(KMGホールディングス・183cm、87kg・右投右打・福岡大・23歳)。大学から投手に転向して在学中に150km台をマーク。入社後の2年間の実戦経験でメキメキ頭角を現している。アベレージ140km台後半の剛速球に、カットボールも140km台前半をマーク。剛腕なのにコントロールに破綻がないのも大きな長所で、この都市対抗予選でも23イニング投げてわずか4四死球の安定感。伸びしろも大きい。
プロスカウトたちが待望している石伊雄太捕手(日本生命・179cm、83kg・右投右打・近畿大・23歳)の成長も、今大会の大きな楽しみだ。すでにスローイング能力はプロにまじってもトップクラス。課題だったバッティングも、特に今季、公式戦で長打が出るようになった。肩で注目されて、そこにバットが付いてくる……古田敦也捕手(トヨタ自動車→ヤクルト)の台頭の軌跡が重なって見える。