真夏の球宴の風景はほとんど変わってはいない

　都市対抗野球は客席も独特な雰囲気を放つ。

　高校3年生の夏、私が所属していた野球部は都大会ベスト8で敗れた。試合後、球場のトイレで泣くだけ泣いて、もう閉めるから……と球場を追い出され、もう二度と野球なんかやるか……とボンヤリ歩いているうちに、気がついたら都市対抗の後楽園球場のネット裏に座っていた。

　東京ドームになる前の、ジャンボスタンドのあった後楽園球場。カクテル光線に照らされたグラウンドの熱戦と、スタンドの応援合戦が疲れた目にまぶしかった。

　炎熱の球場での「真夏の球宴」も、今は汗ひとつかかず、快適に観戦できるようになった。それでも、冷たいビールをグイグイやりながら、職場の友の渾身のプレーに声をからし、7回のエールの交換には、立ち上がってめったに歌わないはずの「社歌」の歌詞を追う。

　真夏の球宴の風景は、あの頃も今も、ほとんど変わってはいない。