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「宮部藍梨がいるからリベロを2人選べた」16歳で初代表、アメリカ帰りの秘蔵っ子が初五輪…天才少女が“最強のユーティリティー”に変貌したワケ
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/07/06 11:02
12人のパリ五輪代表メンバーに名を連ねた宮部藍梨。本大会中に26歳の誕生日を迎える
「考えもしなかった」という五輪出場が決まり、取材に応じた際も「たくさんの人に支えてもらって、今、自分がここにいられるのを感謝したい」と神妙な面持ちで語る。昨秋の五輪予選でも先日のネーションズリーグでも途中出場での起用がほとんどだが、「どんな出番でも自分の役割を果たすだけ」と受け止める。
「途中から入ってプレーするのは出場時間が短い分、簡単に見えるかもしれないですけど、実はすごく難しい。自分でもずっとそう思っていたんです。でも、そこをピンチだと思うのではなく、自分が輝けるチャンスだと。ここで流れを持ってこられたら自分のためにも、みんなのためにもなる。プラス思考で考えられるようになったのは、この3年間での成長です」
「ギリギリの局面こそ、“個”が輝けるチャンス」
事あるごとに、言い続けてきた目標がある。
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「ユーティリティープレーヤーとして成長したい」
ミドルブロッカーへの挑戦もアウトサイドヒッターの経験を活かし、攻撃やブロックはもちろん、レシーブでも「ヘタクソでもつなげるボールは諦めたくない」という言葉の通り、どこまででも追いかける。
さらにブロックだけでなく、腕の長さを活かして高い打点から放たれるサーブも宮部にとっては武器の1つ。ネーションズリーグで初の決勝進出を決めた準決勝、ブラジル戦でも随所で効果を発揮した。ここぞという場面でのブロック得点を含め、途中から流れを変える活躍も決して偶然ではなく、「自分にしかできない仕事、自分に求められている仕事を果たしたい」と努力を重ねてきた結果でもある。
「高さで勝る相手にも(ブロックで跳ぶ時)『上から打たれる』と思うのではなく、(自分が跳ぶ)クロスに打ってくれてありがとう』という気持ちで跳ぶ。やられる、じゃなく、ありがとう。リリーフサーバーとして入る時も同じ。途中で入るのはドキドキするし、緊張していないかといえば真逆。めちゃくちゃ緊張しているんですけど、緊張していてもいいプレーは出ないから、ここで崩したら絶対カッコいいと思って打つ。そういう気持ちが競っている局面で強くプレーに出ると思うので、ギリギリの局面こそ、個が輝けるチャンス。行ける、行ける、と自分に言い聞かせています」