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甲子園の風BACK NUMBER
大谷翔平を甲子園で撃破…2012春夏連覇の大阪桐蔭“黄金世代”の副将はいま何してる? 白水健太が独立リーグ→高校指導者の道を選んだワケ
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by(L)Fumi Sawai、(R)JIJI PRESS
posted2024/06/21 17:10
現在、福井工大福井高の監督を務める白水健太。大阪桐蔭高校時代は副将として大谷翔平擁する花巻東も破り、春夏連覇も達成した
そんな時は、独立リーグにいた時のメンバーに声をかけるのだという。
「ベンチ入りギリギリの選手との接し方とか、よく相談するんですよ。というより、むしろ独立リーグのメンバーの方が、そういう子の気持ちを分かっているんですよね。相談するたびに色んなことに気づかされます」
17年冬、母校でコーチとして指導を受け、当時福井工大福井の監督だった田中公隆氏から、チームの指導を手伝って欲しいというオファーを受けた。「色んな縁をたどってきた話。恩返しをする意味でも今が指導者になるタイミングなのかもしれない」と、白水はその話を受諾。石川ミリオンスターズを退団し、福井にやってきたのだ。
18年春からコーチとして田中監督の右腕となり、指導に携わった。寮に住み込んで親身になって選手と接し、“兄貴分”のような存在となった。その後、20年9月から監督に就任。
同志社大時代の同級生だった福井真吾を部長に迎え、21年春からは中学時代のチームの恩師で、近鉄・南海でプレーした山口哲治氏がコーチとして白水監督をサポートすることに。監督になり、体制を固めながらチームは聖地を目指していくことになった。
全国屈指の強豪ライバル、コロナ禍…怒涛の日々
とはいえ、白水が監督に就任したのはコロナ禍真っ只中の時期だった。何もかもが制限された中、手探り状態のチーム作りは苦難の連続だった。
「大変だったというか……怒涛でしたね。3年前には(最速147km右腕の)エースの向嶋(大輔、現・福井工大)がいたんですけど、向嶋を甲子園に連れていってやれなかったこともすごく悔しかったですし。なかなかうまくいかないことが多かったです」
今や福井県の盟主とも言える敦賀気比、そして北陸といった壁に自信を持って臨んでも跳ね返された。北信越大会に出場しても、どうしても突破口を開けないまま試合が終わってしまったこともあった。
もどかしい日常の中で、テレビをつけると大谷翔平のメジャーでの活躍を伝える映像が流れていた。
日米を、いや世界を席巻するスーパースターとなった同世代の怪物だ。かつて18.44m先で見つめたこともあったその姿が、眩しくも、どこか虚しく自らの目に映った。そんな時は、かつて夢舞台で戦った怪物の「衝撃の記憶」が、ふと脳裏をかすめることもあったという。
<次回へつづく>