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ビール瓶を手にした長谷部誠32歳「心の底から喜びは湧かないです」落胆する元仲間の肩に手をかけ…“降格→移籍→古巣に勝って残留”の悲哀 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama,Dennis Grombkowski/Getty Images

posted2024/05/23 06:02

ビール瓶を手にした長谷部誠32歳「心の底から喜びは湧かないです」落胆する元仲間の肩に手をかけ…“降格→移籍→古巣に勝って残留”の悲哀<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama,Dennis Grombkowski/Getty Images

ニュルンベルク時代とフランクフルト移籍1年目の長谷部誠。両クラブ間を移籍したことで抱えた思いとは

 はしゃぎまわる仲間をよそ目に、悲しみに暮れるニュルンベルクの選手たちの元へ向かい、肩に手をかけてねぎらいの言葉をかけていく。チームメイトとともにフランクフルトのサポーターが陣取るスタンドまで挨拶にいったが、笑顔は見せない。一人、少し後ろに下がって、スタンドを見つめているだけだった。

 そして、それは周囲の目が及ばないロッカールームに戻ってからも変わらなかった。

心の底から喜ぶ感覚は、湧いてこないです

 実は、この試合終了直後のフランクフルトのロッカールームの様子を映した映像がクラブのFacebookページ上で公開されていた。カメラは高い位置に設置されていたようで、ほとんどの者がその存在に気づいていない。選手やスタッフは緊張から解き放たれ、踊ったり、ハイタッチをかわしたりしていた。試合の後なのに、水やスポーツドリンクなどが配られる様子はない。代わりにふるまわれていたのは、お祝いのためのドイツビールだった。

 長谷部はロッカーで一人、静かにたたずんでいた。そこだけ空気が違う。ただ、試合後だから、喉は渇く。ときおり、仕方なくビール瓶を手にする。表情は変えない。ビールの国ドイツで、これほどまで美味しくなさそうにビールを飲める人がいるだろうか。

 そう感じさせるような長谷部の振る舞いに、彼が大切にするものが表れていた。

「心の底から喜ぶっていう感覚は、本当に湧いてこないですね」

 あの日の長谷部はそんな言葉を残した。<つづく>

#5に続く
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