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「こんな魅力的な19歳、未来しかない」安納サオリが羨んだ女子プロレスラー…スターダム・羽南の“記者もファンも驚かせ続ける”逸材ぶり
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/05/12 17:03
安納サオリが持つワンダー・オブ・スターダム王座に挑戦した羽南(19歳)
「でも、イメチェンしてそこで一回、満足してしまった自分がいたんですよ。5★STAR GP(夏のリーグ戦)で“まだ全然だな”って感じたし、秋のタッグリーグ戦では岩谷(麻優)さんと組んで足りないものを感じました。結局、自分が変わらないと何も前に進まないんだって」
イメージだけでなく中身、実質も変わらなければ。羽南は本格的な筋トレをするようになった。
「パワーをつける必要があるし、体も絞りたかったので」
実際に体脂肪は減った。と同時に筋量も増えて、トータルで体重は増えたそうだ。筋トレの効果で「バックドロップホールドのブリッジが少しだけよくなりました」と羽南。
安納サオリが羨んだ「こんな魅力的な19歳、未来しかない」
オカダ・カズチカの試合を見て研究したというアッパーカット式のエルボースマッシュも効果的だった。「自分には打撃技がない」と分析して身につけた技だ。
ただガムシャラに闘っただけではなかった。パワーがついたというだけでもない。考えて試合を組み立てていることが伝わってきた。自分の“勝負どころ”を把握しているのだ。
ただ、チャンピオンの安納は羽南の渾身の大技ラッシュにも耐えてみせた。最後は鮮やかな切り返しで3カウント。経験の差、引き出しの差を感じさせる勝利だった。
「凄すぎる。こんな魅力的な19歳、うらやましい。未来しかない」
安納はそう言って挑戦者を称えた。そして自分について「こんな33歳も魅力的ちゃう?」。
自分とは逆に20代でプロレスを始めた安納とのタイトルマッチを振り返って、羽南は「楽しかったです」と言う。同時に「楽しかったのが悔しい」とも。試合が楽しかったから力が出せた。けれどそれは安納に楽しまされ、力を引き出されたということなのだ。
「安納サオリは入場だけでも魅力的なのに、試合になったらもっと魅力的で。私はまだその域に達してない。安納サオリとの試合は本当に楽しくて。楽しいからまたやりたいんですけど、そう思ってしまうのが悔しいんです。“楽しかった”で終わっちゃダメですよね」