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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「えっ、何も聞いてないんですか?」“敗者ネリの異変”を密着記者は見た…井上尚弥への恐怖心「ネリ、もう立ち上がるな…」思い出した3人の娘
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byNaoki Fukuda
posted2024/05/09 17:16
5月6日、井上尚弥vsルイス・ネリ。筆者は来日から2週間、ネリを取材した
試合結果こそ予想通りだったが、井上のダウンという“アクシデント”が記者たちを動揺させていた。ネリの言葉を待つが、病院に行くため試合後会見は中止となった。肉声を聞きたかった。が、受けたダメージを想像すると、そんなことは言えない。
いずれにせよ壮絶な試合を「目撃した」と思った。この感覚は正しいのか確かめようと、長年ボクシングを追う英国人記者、トリス・ディクソン氏に尋ねる。彼もやや興奮気味に答える。
「誰も予想していなかった展開。1Rのイノウエのダウンは信じられない光景だった。大きな番狂わせが近づいてる、そう考えた人も多いはずだ。すぐに頭をクリアにしたイノウエもすごかった。この試合は間違いなくボクシング史に残る」
試合翌日、大橋ジム。井上尚弥は言い切った。
「すべて想定内。初回のダウンは死角からで見えなかった。誤算があるとすれば、そこの角度調整」
嘘偽りない事実だろう。それほど井上は強かったし、歴然とした力の差はあった。ほぼ無傷の顔がその証左だ。だが同時に、チャンピオンの右頬と額には微小な傷が確かにある。悪童と呼ばれた男が本気で怪物に挑んだ証拠だった。
<全2回/前編《ネリ意外な本音》編から続く>