濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「私がスターダムの光になります」プロレス界の“妖精”なつぽいが長期欠場中に決意したこと…愛されキャラの人気レスラーが歩む“頂点への道”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/04/27 11:05
3月9日の復帰戦に笑顔で入場したなつぽい
エルボーの打ち合いで涙「愛を感じたというか」
そんなSareeeに、復帰戦のリングにいてほしかった。
「道は違えど目指すところはただ一つ」
それが、出会った頃からの合言葉だったそうだ。団体は違うし進む道も違う。けれど頂点を目指すという気持ちは同じだと。だがここにきて、道が交わることもあっていいと思うようになった。
「このカードはファンのみなさんへのサプライズ。ワクワクしてほしいというのが一番です。もちろん自分もワクワクしたかった」
それぞれが個性をぶつけ合う展開の中で、とりわけ印象に残ったのがエルボーの打ち合いだ。Sareeeのエルボーの強さはよく知られるところ。なつぽいも懸命に向かっていった。打ち合いながら、痛みではない理由で涙が出てきたという。
「エルボーに込められたSareeeの気持ちが伝わってきたんですよ。この場では敵なんですけど、愛を感じたというか。プロレスってそういう面があるんです。やっぱりプロレスはいいな、面白いなと思いました」
なつぽいが繋げた「点と点」
最後はSareeeがリストクラッチ式の裏投げでなつぽいをフォール。さすがに復帰戦は甘くなかった。まして相手が相手だ。技を受けた時のダメージも体力の消耗も、道場での練習とはまったく違うレベルだった。
敗れても手応えがあったとなつぽいは言う。4人それぞれの「点と点」を「線にすることができた」からだ。「それがプロレス。これで終わりだとは思ってないです」とも。Sareeeと橋本千紘がタッグを組み、スターダムのリングに上がった。その“点”がまた“線”につながっていく。なつぽいはその“仕掛人”だった。
「新人時代からのサオリとの関係、Sareeeとの関係、それに去年ちっちさん(橋本)と闘って。それが全部つながってこのカードになりました。ここからつながって、さらに広がっていくものがあれば」
なつぽいの言葉は、試合のすぐ後に現実となる。Sareeeが“スターダムのアイコン”岩谷麻優との対戦をアピールしたのだ。両者は4月27日の横浜BUNTAI大会で、岩谷が持つIWGP女子王座をかけて対戦することに。Sareeeは以前から岩谷と闘いたいと語っていた。なつぽいはその具体的なきっかけを作ったことになる。