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水原一平氏は「なぜ60億円超もの借金を背負えた」のか?…角界“野球賭博事件”関与で逮捕の元力士が語る「信用賭け」の恐ろしさ
text by
欠端大林Hiroki Kakehata
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/25 17:29
2010年に発覚した大相撲の野球賭博スキャンダルで謝罪する当時の力士と親方たち。元大関の琴光喜が解雇されるなど大騒動となった
賭博を始めた当初、わずか10ドル(約1500円)だった水原容疑者の1回の賭け金は、最大で16万ドル(約2400万円)に及んだという。
「カネも担保もない状態でも賭けられる――この独自の信用システムがあらゆる違法賭博に共通する最大のポイントです」
そう語るのは、2010年に表面化した「大相撲野球賭博事件」で実刑判決を受けた押尾川部屋の元幕下力士、古市満朝氏(51歳)である。
この事件では、野球賭博に関与していた大関・琴光喜、大嶽親方(元関脇・貴闘力)らが角界から追放されたほか、現役力士ら25名が賭博容疑で書類送検された。
「水原さんの事件は、私が経験した野球賭博事件と多くの共通点があります。社会経験に乏しく、勝負の世界に生きる男たちのなかに、賭博愛好者が多いのは洋の東西を問いません。また、立場のある人間が違法賭博に手を出すリスクの高さも同じです」(古市氏、以下同)
突然「失踪」する力士まで…
前述の野球賭博事件で処分された力士のなかに、宮城野部屋の幕下力士・光法(本名=近藤将大)がいる。部屋の横綱・白鵬のマネージャーをつとめていた光法は現役引退後、引き続き白鵬の側近として「白鵬杯」を始めとするビジネスに関与していたが、いまから2年前に突然「失踪」した。
「光法はその後も野球賭博から離れられず、10億円近い負けをつくったあげく、宮城野部屋の関係者や著名な放送作家からの借金を踏み倒し、白鵬の前から消えたのです。まだ地元の大阪に潜伏していると聞きますが、薬物と同じでなかなか断ち切ることができない。これがギャンブル依存症の怖さだと思います」