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仲間の退団に「ずっと泣いてました」…19歳のシンデレラ・羽南が“揺れるスターダム”で下した決断「憧れは捨てられない」《特別グラビア》
posted2024/04/22 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
スターダムの19歳、羽南が弾けている。3月には『シンデレラ・トーナメント』で初優勝。4月27日の横浜BUNTAI(旧・横浜文化体育館)でのプロレスこけら落とし興行で、安納サオリの白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)に挑む。
「シンデレラのドレス、似合ってるじゃん」
「MIRAIに勝った時、優勝いける、と思いました。バックドロップにこだわったのがよかったですね。MIRAIからは、どうしてもバックドロップでスリーカウントを取りたかった。こだわって、こだわって、勝つことができて……。その次で(スターライト・)キッドに勝って、確信しました」
だが、3月20日の優勝戦の日が近づくと、1週間前から緊張に襲われた。試合は水曜日だったが、月曜日には食事ものどを通らなくなり、「死にそうなくらいだった」という。夢見たシンデレラ・トーナメント優勝という重圧が、羽南にのしかかっていた。それでも、意を決して名古屋国際会議場のリングに上がった。
「名古屋では準決勝、決勝と2試合やる気持ちでいました。琉悪夏とのシングルは自分がフューチャー(・オブ・スターダム)のベルトを持っている時に戦って以来、大事な時にしか当たっていない。同期の琉悪夏は特別ですね。準決勝は気持ちが入りましたし、めちゃ楽しかった。いつかメインで絶対シングルしたい。今はその過程を踏んでいる段階。2人でメインを張れるよう、互いに成長したいです」
決勝の壮麗亜実とは過去に『5★STAR GP』とフューチャーのタイトルマッチで2度戦っていた。またシングルでやれるのがうれしかった。羽南はバックドロップで壮麗を破った。
成長著しい羽南は、1回戦を突破したのも初めてなのに「シンデレラに一番近いところにいる」と言われていた。その期待に応えて、羽南は「本物のシンデレラ」になった。
名古屋まで足を運んだ母が見守るなか、華やかな優勝ドレスを着て、満面の笑みを浮かべてリングに上がった。
「吏南が『シンデレラのドレス、似合ってるじゃん』って言ってくれたんですよ。それが一番うれしかった。普段はまったく褒めない人なんですけど(笑)」
羽南は心底うれしそうに、同じプロレスラーでもある妹の言葉を振り返った。
揺れるスターダムで下した決断
昨年から今年にかけてスターダムは揺れた。19歳の羽南もその激震に否応なく巻き込まれていた。
「めちゃ不安でした。でも、自分の気持ちが不安定になると、妹の吏南と妃南の方が不安になっちゃう。2人は学校もあるし、悩むならプロレスのことで悩んでほしい。会社のことで悩んでほしくない。どうやって妹たちに伝えればいいかな、というのをずっと考えていました。結局、一番迷っていたのは自分だったと思います」