酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
巨人ではなくDeNA復帰・筒香嘉智は「野球界の未来を憂う若き指導者」…活動を追う記者が伝えたい素顔「5年間の米国生活はムダではない」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2024/04/19 11:06
DeNA復帰を決めた筒香嘉智(写真はメジャー挑戦前のもの)。オフの意欲的な取り組みを振り返れば、ベイスターズと日本球界にもたらすものは多大なはずだ
これが、のちに橋本市での「球場建設」「アカデミー」につながるのだが、ここで彼は自らのトレーニング方法についても語っている。
「僕は、今、ウエイトトレーニングはやっていません。一時期はやっていましたが、その時にはよく怪我をしました。ウエイトトレーニングで作った体には細かいセンサーがないと感じています。だからちょっとしたずれに気が付かなかったりします。
ウエイトトレーニングをすると、筋肉が大きくなり、ボールが飛ぶようになって力がついた気がしますが、実際は、やめてからの方が飛距離がどんどん伸びていきました。ウエイトトレーニングをしていると人は、すれ違ったときによくぶつかることがあります。体の細かいセンサーが鈍くなっているのでははないか、頭の回路まで硬くなっているのではないかと思います。
大怪我をしないためにも、体のセンサーが働く状態にしておく必要があると思います。ウエイトトレーニングが自分の体に合った選手もいるでしょう。すべてを否定しているわけではありませんが、少なくとも僕はそう感じています」
筒香は自らのエクササイズを実演してみせた。その意図についてはこのように語っていた。
「ウエイトトレーニングは即効性があって、わかりやすいですが、それ以上奥に入って考えられないと思います。エクササイズは時間がかかりますが、はっきり効果が出てきます」
多くの日本人MLB選手がウエイトトレーニングで体を大きくする中、筒香はMLBでもこの練習法を続けたようだが「フライボール革命」が進展するMLBでは、このトレーニングが裏目に出た可能性はあるだろう。
「メジャー挑戦で少年野球への思いは?」の質問に…
そして2019年10月、記者会見を行った。すでに退団しているDeNAの球団広報が立ち会っていた。異例のことだが、これは球団が筒香を快く送り出したことを意味している。
筆者は「MLB挑戦によって、少年野球に対する思いは変わるか?」と質問した。返ってきた答えは以下の通りだった。
「僕もこの野球界に今まで本当に育てていただいていますし、野球界に対して何か還元をしたい、未来の可能性がある子供たちのために、野球界がより良くなるためにやらせていただいていますが、それは今までと変わらずやっていく方向です。